第十五話 ページ17
潜入捜査(?)開始前夜
「憂鬱だ…」
まあ犯行予告されてる学校に通わなくてはいけない人間の、当然の反応だ。
彼女の顔が、無表情でなければ。
「なら、もう少し憂鬱そうな顔をしてみたらどうだ?」
「…」
口の端をきゅっと指で押さえてへの字に曲げた。眉間には無理やりシワが刻まれている。
「悪かった。謝るからもう止めてくれ。悲しくなる」
「えー」
「私、そんなに無表情ですか?」
風呂上がり、浴衣の足元を少し崩して布団の上に座り、話し込んでいた。
「かなり、な。」
どうやら自覚は無いのか。何故あんなに声色と表情をバラバラに操れるのか、聞いてみたいものだが。
「意識的にやるか、よっぽど感情を動かす事がない限り、このままなのかもしれませんね。」
今Aは、困ったものだと言う感じで鏡を見つめている。声の抑揚は人並み。でも、表情は驚くほど平淡。無 であった。
「愛想笑いの一つも出来ないようでは、クラスで浮いた存在になるんじゃあないか?」
結局、心配なのはそこだった。
全ての感情に関して希薄で、今にも消え入りそうな目をした人間はごまんといる。が、Aは違う。至って普通に話す子だ。話を聞く限り、好意を寄せた人間に一直線になり過ぎたり、少し抜けた所もあるが、普通なんだ。
だからこそ、あの無表情さは人の目に付きやすい。 場合によっては、反感を買うやも知れん。
「へへへ」
ぐにゃ、とAの表情筋が緩んだ。
「な、ど、どうした?」
ビックリしたビックリしたビックリしたぁ…
…大丈夫だ。動揺なんてしていない。
「心配していたんですね。」と、さっきまではりつめていた白い頬をだらしなく緩めて言う。
「…電気消すぞ。」
また少しすると、表情はもとに戻った。嘘だったかのように、すぅっと笑顔が消えていった。
全く働こうとしない表情が、まさか自分が少し心配しただけでああもなるなんて。心配には及ばないということか、それとも
寝顔すらはりつめて、まるでマネキンのような少女を長いこと眺めていた。
…緊張して眠れない。
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シリカゲル(プロフ) - ひなのまるさん» それもこれもひなさんがウチに文ストの魅力を教えてくれたからだよ。ありがとう! (2016年7月14日 1時) (レス) id: 028254152a (このIDを非表示/違反報告)
シリカゲル(プロフ) - イロハさん» ウチも君のことはリスペクトしてるぜ!ありがと!! (2016年7月14日 1時) (レス) id: 028254152a (このIDを非表示/違反報告)
ひなのまる - ランキングおめでとう御座います!!更新無理せず頑張ってね! (2016年7月13日 21時) (レス) id: 8462bd0719 (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - ランキングおめでとうです! 面白いし文の書き方うますぎて、ほんとにリスペクトですわ! 更新ファイトっ! (2016年7月13日 19時) (レス) id: 276ba08b49 (このIDを非表示/違反報告)
シリカゲル(プロフ) - 湯豆腐さん» ミステリアス!!マジですか!!ありがとうございますm(__)mこれ以上にない褒め言葉ですよ! (2016年7月13日 18時) (レス) id: 028254152a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シリカゲル x他2人 | 作成日時:2016年7月9日 3時