俺の胸倉を掴んでくれ (ページ18)

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疾痛惨憺ページ18

…

「それで俺が、頭に乗ってますよって言うまで30分も眼鏡探してたって言うから、さすがに笑っちゃいましたよね。笑」

お店を出て目黒くんを駅まで送りながら、わたしがお昼休みでいなかった時の話をしてくれる。
わたしの最寄り駅はもちろんここ。
予想通り「家まで送ります。」って言った目黒くんは頑張って説得して諦めてもらった。

『部長、仕事ではしっかりしてるのにたまに抜けてるん「A」

目黒くんとの話に夢中で前方から知った人が歩いて来てたことに気がつかなかった。

『ふっかさん。……と照くん。』

二人は並んで歩いていたはずなのに、名前を呼ばれたからか、彼が先に目に入ってしまった。

「えーっと、仕事帰り？」

『あ、うん。照くんも？』

「まあな。俺はこれからふっかと飲み行くとこ。A、何回連絡しても返事ねえからさ。」

…そういえば、携帯見るのすっかり忘れてた。

「Aも行こうよ。」

えっ？

ここまでずっと無口だった彼が急に口を開いた。目の奥が笑ってない笑顔で。

『わたしもう飲んで来ちゃったの。これから帰るところだから。』

いつもと変わらない対応が出来る自分にホッとする。

「えー付き合ってよ。Aちゃん。」

わたしより断然身長の高い彼がその綺麗な顔でわたしの顔を覗き込んでくる。

言葉とは裏腹の射抜くようなその目に一瞬ドキッとさせられる。

『でも目黒くんを駅まで送らないといけないから。』

「じゃあ俺らも一緒に送るよ。」

目黒くんを口実に出来ないようにすかさず邪魔をしてくる。悪い意味で頭の回転が速い。

「いいかな。目黒くん？」

刺すような鋭い目で目黒くんを見る彼。
わたし以外もきっと気づいてる。いや、彼がわざと気づかれるようにやってる。
全く隠そうとしない目黒くんへの嫉妬を。

目黒くんが恐がるからやめてほしい。

「いいですよ。」

でも目黒くんは恐がるどころかむしろ挑発的な目。

「あーじゃあさ、とりあえず目黒くん？送るか。」

照くんありがとう。この空気を壊してくれて。

とりあえず駅に向かうことになったわたし達。
隣は何故かふっかさん。
そしてわたし達の後ろに照くんと目黒くん。

わたしが目黒くんの隣を歩こうとあの手この手で躱そうとしても、それを躱されてしまった。

…