俺の胸倉を掴んでくれ (ページ17)

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もうわたしはそれはそれは必死で。
目の前で落ち込み気味の目黒くんに気がつかないふりをすることに。

目黒くんもなるべくいつも通りでいてくれようとして、わたし達は “ 同じ会社の先輩と後輩 ” という役を演じ続けた。

もうお互い精神的にクタクタなはず。

『じゃあそろそろ帰ろっか。明日も仕事だからね？』

「はい。明日もよろしくお願いします！」

…目黒くんが元気に笑ってくれた。
この問題はわたしにはどうすることも出来ないから、こうやって笑ってくれると少し安心する。

『うん。よろしくお願いします！』

目黒くんは “ 俺が誘ったんだから俺が出しますよ！” って言いそうだから、お手洗いのついでにお会計を済ませた。
先輩としてのプライドもある。

『ごめんね、お待たせです。』

「いえ全然。」

レジを素通りするわたしに焦って「Aさん、お会計！」っていう目黒くんの声が聞こえる。

『もう済んでるから。』

「え？……ダメですよ！俺が出します。」

『いいから。目黒くんが今度後輩の子と飲みに行く時に奢ってあげて。』

「でも！『いいの。今日誘ってくれてありがとう。そのお礼。』

こんなことなんにもならないことなんて分かってる。
でも黙って目黒くんに奢られるなんて、それこそわたしが許さない。

「…わかりました。ご馳走様です。」

『うん、どういたしまして。』

「その代わり、これからもしつこくAさんのこと誘いますよ？」

そう言う目黒くんの表情はすごく真剣で。
さっきのちょっとシュンとした顔はすっかり身を潜めていて。

『ふふっ、しつこくはちょっと困るかな。笑』

「いやもう俺決めたんで！笑」

さっきまでの気まずさはどこかに行ってしまったように、二人で笑い合いながらお店を出た。

…