俺の胸倉を掴んでくれ (ページ11)

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side 紫

散々呑んでマンションまで帰って来て、5階でエレベーターから降りた照と別れて、俺は最上階まで来た。

友達と飲みに行くって言ってたからまだ帰って来てるかは分かんない。
でも帰って来てないなら、帰って来るまで待てばいい。

―ピンポーン

『はい。』

お、いた！

「Aちゃん！あ～け～て！」

『はい、ちょっと待っててね。』

―ガチャ

『どうかしたの？』

ふわっとした微笑みの中に "何しに来たの " っていう迷惑そうな感情が読み取れる。
黒い部分を見て " ああ、好きだな。" ってすとんと思う俺も相当大したもんだよな。

でもほんとたまんない。
いつか『迷惑』って不機嫌顔で言わせたい。

Aに胸倉を掴まれながら睨まれたい。

そんぐらいAの感情を引っ張り出してやりたい。

「うん。会いにきた！」

『ふふっ。酔ってるの？』

「酔ってないよ～。」

まあ多少は酔ってる。でもいつもより意識も理性もしっかりしてる。

二人でソファに座ると、俺は当然Aから離れない。
手を握ろうとして躱されて。
肩に顎を乗せようとして躱されて。

いつものことだ。
Aに意図的な接触なんて敵った試しがない。

でも俺を舐めてもらっちゃあ困る。
触れようと思えばいくらでも出来る。
俺は男なんだから力でねじ込めば楽勝。

だけどそれはなんか違う気がして。
俺からの接触を拒まなくなった時、やっとAの心が俺を受け入れてくれる気がするから。
だから、それまでは今のままでいい。

それにAだって俺が本気でやってないって気づいてる。

俺が力業で迫るような男じゃないってのも間違いなく分かってる。

俺が本気でAを好きだってことも気づいてるはずなのに、Aはちっとも俺を受け入れてくれない。

…