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▽side.t
ボフッ、と勢いよくベッドへダイブした俺は、そのまま枕に顔を埋めた。
「うち、来る?」
艶やかな黒髪を風に揺らしながら、じっとりと濡れた瞳で俺に問いかけたアイツの言葉が、耳から離れない。
まさか、そんな。
北斗の口から出るなんて想像もつかない言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
雨に憂鬱になった俺の、都合のいい聞き間違えか?なんて一瞬にして考えるが、北斗の顔は至って真剣で。
なんなら、俺の返答をじっと待つものだから、その視線さえ艶っぽく見えて、俺は狼狽えた。
なにか返事をしなければ。そう思ってはいるものの、言葉が喉をつっかえて出てこない。
…い、行く?行くのか、俺?
こういう時、何て言ったらいいんだ?!
「…あ、う……、」
なかなか返答しない俺に呆れたのか、北斗はゆっくりと動き出した。
「…冗談」
「…え」
困ったように笑いながら、徐々に近付いてきたかと思えば、そのままゆっくりと上着を脱いで俺に被せる。
そしてそのまま、傘を渡された。
「風邪、引くなよ」
そう呟いたかと思えば、雨の中走り出す北斗。
俺は呆気にとられたまま、その場に立ち尽くした。
ハッと意識を戻した頃には、既に北斗の姿は見えなくてなっていて。
俺はなんてことをしてしまったんだ、と頭を抱えた。
どうしてアイツは、あんなことを。
彼なりの、優しい冗談だったのか。
もしかして本当に、家に入れてくれるつもりだったのか。
答えはわからないけれど、アイツの言葉に大きく心臓が脈を打ったことだけは、確かな事実だった。
枕からゆっくりと顔を横にずらして、部屋干しした北斗の上着を見つめる。
玄関口には、広げたまま乾かしてある黒い傘。
その二つを見るたびに、あの言葉が反芻する。
じんわりと熱を持つ自分の頰は、一体なんだ。
アイツの久々の優しさに触れたからか、珍しくまともに話をしたからか、わからない。
わからない。なんだ、これは。
考えれば考えるほど脳が北斗で埋め尽くされてしまいそうで、怖くなる。
段々と熱を帯びる自分の身体、ズキズキと痛む頭。
次第に意識は遠のいていって、気付けば俺は、そのまま眠りについてしまったのだった。
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白梅(プロフ) - なぺこさん» なぺこさんコメントありがとうございます!嬉しい言葉がたくさん、、!不定期更新ですが、ぜひこれからも応援よろしくお願いします! (2019年6月3日 16時) (レス) id: ff41a5aa52 (このIDを非表示/違反報告)
なぺこ(プロフ) - とても面白いです!文章から、その時の情景がすごく伝わってきて読みやすいです!!好きです!応援してます!! (2019年6月2日 22時) (レス) id: 7d886639bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白梅 | 作成日時:2019年5月15日 18時