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「うへえ〜なんもねえ」
「黙ってソファ座ってろ」
「お邪魔しまーす」と小さく呟いて北斗の部屋へ入れば、あまりの殺風景さに驚いた。
必要な物以外は置かないタイプなのだろう。
そんな俺の反応を軽くあしらい、リビングのソファへと促した。
見た目より柔らかいその感触に、幾らか安心する。
キョロキョロと、どこを見たらいいのかわからず戸惑う俺を他所に、北斗は財布だけを持って玄関へと向かった。
「え、どこ行くの？」
「…夕飯の食材。今うち何も無いから」
「そんなん帰りに寄ってくれば良かったじゃん」
「…はあ、」
馬鹿か。と自身の髪をクシャリと掻き上げて、溜息をつく。
その仕草が色っぽいと、また余計なことを考えた。
「病人連れてウロウロ歩き回れるわけないだろ。いいから、京本は自由に寛いでて」
「じゃ、行くから」とぶっきらぼうに、だけど優しさを含んだ背中はそのまま夜の街へと消えていった。
一人残された俺。
自由にって言われても、人様の家で何か出来るわけでもない。
変に物に触ったりしたら、怒られそうでそれも嫌だ。
ならばテレビをつけるくらいは、許されるだろか。
ゆっくりと立ち上がってリモコンを探す。
律儀にテレビの真横に置いてある感じも、なんだか北斗らしくて笑ってしまった。
ぼう、と流れる音声と画面を見つめながら、そういえば彼の家に来たのは二回目だと思い出した。
初めて来た時は、確かまだ、俺たちが平気で手を繋いでいた頃で。
ハグなんて当たり前にしていて。
今以上に線の細い俺を、まるで女のように扱っていた北斗。
真っ正面から慕ってくるアイツに、精一杯応えようとしていた俺。
それらはもちろん仕事ではなく、プライベートでのことで。
今から思えば、よくもまあそんな小っ恥ずかしいことを平気でしていたものだ。
だけど、そこに違和感を持たなかったのは、俺たちがまだ子どもだった証なのかもしれない。
懐かしさと、寂しさと、なんともいえない感情が胸の中で渦巻く。
あの頃に比べると、この部屋も少しは都会に馴染んできたのだろう。
テーブルの端、コロンと揺れたピンクの花を見つめて思った。
「………え、これ、」
ピンクの、花？
未だ火照る身体と、痛む頭。
しかしそんなものを気にも止めず、バッとその花へ駆け寄った。
ちょん、と触ってみる。
少しだけ、硬い。
「…これ、造花だ」
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白梅(プロフ) - なぺこさん» なぺこさんコメントありがとうございます！嬉しい言葉がたくさん、、！不定期更新ですが、ぜひこれからも応援よろしくお願いします！ (2019年6月3日 16時) (
レス) id: ff41a5aa52 (このIDを非表示/違反報告)
なぺこ(プロフ) - とても面白いです！文章から、その時の情景がすごく伝わってきて読みやすいです！！好きです！応援してます！！ (2019年6月2日 22時) (レス) id: 7d886639bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 | 作成日時：2019年5月15日 18時
