第7話 敵の大将 ページ9
「A先輩、助け…」
部下が焔に焼かれる寸前、風遁で炎の竜巻に変化させ、雨が降る前の蒸し暑さも加わって汗だくになる。でも、ここで手を緩めれば、一つの部隊が全滅するのは明らかだ。
一般人だと思っていた者が、炎を操っている。しかし、それを事前に部下に通達していたため、動揺は少ない。次第に炎の威力が下がりはしたものの、警戒を緩めない。
たとえ、数多の里の子供を誘拐する罪人である敵の大将が、一般人の女性で、自分の実母だったとしても。
「あら。随分態度が大きくなったじゃない。実母に対して、その…」
「黙れ」
先程の熱量からして、コイツに通常の武器は通用しない。溶かされて、使い物にならなくなるのがオチだ。
コイツを捕らえる段取りは、一体どうする? どうすればいいの? お父さん、助けてよ。
「異能力…」
(行け)
後ろ手に指示したフォーメーションの型は、A。班は、それぞれ四人一組で構成されている。イ班は、子供達の安全確保。ロ班は、大将以外の敵を殲滅。ハ班は、部隊長と共に大将を捕らえる。
「『紅キ焔・鎖』!」
発動にかかる時間は速いが、忍者のように、素早く動けず、小回りが利かない。
「なっ…! このっ…!」
土中から飛び出した炎の鎖を、自分達の身体能力で回避し続け、一時的に再起不能にするため、部下達は四肢を繋げている関節を、背にしている鞘から抜刀し容赦無く貫いた。激痛に悲鳴をあげる女を無視し、勢い良く一斉に刀身を引き抜き、赤い液体が裂かれた部位から滴り落ちていく。
「異能りょぐ!?」
黒猫の仮面を被った部隊長であるあたしは、チャクラを練る事も、抜刀もせずに、無言で腹を蹴り上げた。立ち上がる事もできずに、ぶざまに地面に背中から倒れた実母の顔面を、遠慮なく踏みにじる。
「今まで誘拐された幼い子供が受けた心の傷に比べれば、刀傷など軽傷のうち。これしきの事で悲鳴をあげるなど、笑えるくらいおかしいな。なァ、大将さんよ?」
「ぐ…が…」
右脚に全体重を乗せ、みしみしと骨が音を立てる様子を黙って聞き、そのまましゃがみ、彼女の焦げ茶色の瞳が苦痛に歪んだのを見て、黒猫をかたどった仮面の下で
嗚呼。その顔が、ずっと見たかったんだ。
歓喜している事を悟られないように、
「アンタに土産がある。受け取れ」
額と喉に呪印を施し、容易に『異能力』が使えないようにする。
28人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時