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第19話 二人っきりの夜 ページ21

「御馳走様」
「お粗末様でした」

 席を立ち、完食して空になった食器を、流し台へ持っていき洗っていく。夕食は、(さわら)の山椒焼きで、舞茸が添えられていた。4ヵ月程、居候の形で暮らしてきたが、家主の得意料理の分野は、祖父母直伝だという和食。洋食は、気が向いた時にしか作らないらしい。中華は、作った事が無いようだ。

「あのさ。龍の世界の事、教えてくれる?」
「来る方法も解明されぬのにか?」
「…もし、行けたらの話だよ」

 彼女も席を立ち、魚の骨を流し台の隅に備えた、生塵芥(ゴミ)専用の銅製の(かご)に入れて捨てる。

「休日に、いつも行く喫茶店があるのだが――」
「ちょっと待って。メモするから」
「しなくても良い。(やつがれ)が、Aと一緒に行きたいからだ」

 余程嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべる様子に釣られて、笑みがこぼれた。

「他には、景色が綺麗な場所とか、歴史的建造物を見て回りたいな」
「綺麗だと思った事は無いが、昔から建っている物は多数ある」

 目を輝かせるが、『それも全てお預けだ』と返せば、眉間にシワを寄せ、睨まれた。

「住んでいる場所も、所属する組織の拠点も、横浜。中華街と海沿いの景色が有名だ」
「海か。数年前の任務で、行ったきりだな。…まァ。一人で見るより、大切な人と見たほうが記憶に残りやすいし、それまで楽しみにしておくよ」
「すまない」
「気にするな」

 快活に笑いながら背中を叩かれて、当然、激しく咳きこみ、Aに謝られた。


 普段は、居間のリビングテーブルで向かい合って会話をするが、今日は場所を変え、本屋が併設されている喫茶店同様、ローソファーで隣り合わせに座った。

「A。来い」

 両手を広げたら、照れながら背中に腕を回してきて、(やつがれ)を抱き締めた。これも良いが違う。そうじゃない。

「……」
「え?」

 無言で抱き抱え、向きを反転させ、(やつがれ)の前に座し、腰に腕を回して、肩に顎を乗せる。要するに、後ろから抱き締める体勢だ。横目に彼女を見れば、赤面し、硬直するAの姿があった。
 個人差はあるが、(ちまた)では、忍は、五感の中で特に聴覚が鋭い。故に、耳が敏感だ。頬に接吻(キス)を落とし、耳元で(ささや)いた。

(今は、これで許せ)

 すると、お返しとばかりに、熱が集まった表情のまま、手の甲に口づけされた。

「あたしも今、これで精一杯だよ」

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 芥川龍之介 , NARUTO   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時

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