第2話 看病と実弟 ページ3
「ごほっ、ごほっ」
彼が寝る前に体温計が示した温度は、38度。明日には下がると思いたい。幸い、昨日から3日間休みをもらっているため、子育てだけでなく、看病にも十分時間を費やせる。
現在、朝の9時。芥川が就寝してから、ちょうど半日が過ぎた。
ナルトにチャクラコントロールの課題を与え、朝の家事を済ませた後、浴室乾燥機で完全に乾ききった彼の黒い外套と服を、ハンガーにかけたまま部屋に持ってきている。
これで、少しは安心するだろうか。
呼び鈴が鳴り、魚眼レンズで外を覗くと、弟のオサムがあくびを噛み殺して立っていた。すぐに玄関のドアを開け、夜勤明けの実弟を家の中に招き入れる。
「おはよう。修」
「おはよ。替えの服だ。彼の具合は?」
「まだ咳が出てる。そろそろ起きてくると思うけど」
昨日、傘とレジ袋を片手に結界を張りつつ、芥川を背負って帰宅した時、留守番と子守を頼んで泊りに来ていたオサムがおいとまするのをやめさせ、未使用の服を借り、彼が着替えさせたのだ。紙袋に入っている弟の服を借り、リビングにある席に座るよう促してから、本当は自分用に温めていたココアを電子レンジから取り出し、差し出す。
「飲んでいいよ」
「いいの?」
「ん。あたしは、芥川の朝食を作るから」
椅子に引っかけたままのエプロンを手に取り、冷蔵庫から卵と醤油を取り出し、炊いていた白米を炊飯器から鍋に移して、手早く粥を作る。この間に、ぐいっとホットココアを一気に飲み干し、『じゃあな』とだけ言って、オサムは帰っていった。何がしたかったんだ。
「よし。できた」
完成した卵粥を一人用の鍋ごと手袋で持ち、鍋底を右手の手の平で支え、自室を2回叩く。短い返答が聞こえた後、黒い外套を羽織り、まだ顔が紅い芥川が、ベッド横に立っていた。
「おはよう。芥川」
「…おはよう」
寝癖がついたままの彼が、かわいく映ると同時に、儚く見えたのは秘密だ。鍋敷きを持ってくるのを忘れたのを思い出し、不要の雑誌の上に置き、芥川の隣に座す。
「…A」
「ん。何?」
熱のせいで顔が
「先程、男の声がしたが、誰だ?」
「実弟の修治だ。その服の持ち主さ。それが、どうかした?」
「いや、なんでもない。気にするな」
恋心に気づくまで、あと数か月かかるとは知らなかった。
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時