第16話 黒猫達と狼の恋模様 ページ18
「
「…当のイベントは、まだ2週間先だけど、悪戯一択かよ」
「貴様など悪戯で十分だ。羅生門」
「わァ。喰われる〜」
俺、はたけカカシは、間近に見た『異能力』に、割と本気で逃げていると、曲がり角で誰かと接触した。
「カカシ?」
「A? なんつー…」
「見んな!」
「へぶっ」
右ストレートを左頬に食らい、忍としてあるまじき悲鳴が出た。コートから『童貞を殺すセーター』が、垣間見えたが、Aが所持するはずが無い。という事は、隣に立つ紅の所有物で、コイツの仕業か。
「警戒して、トレンチコート持って来て良かった」
「美人でプロポーション良いのに、もったいない」
「色気なんざ滅べ」
芥川君。一瞬、Aの格好に見とれてたデショ。
そんな言葉を呑みこんで、改めて、Aの格好を観察する。
グレーの『背中が開いたセーター』に、前を開け放たれた黒いトレンチコート。黒のストッキングで、必然的に色気が生まれ、太ももが尊い。さりげなく真珠をあしらった黒のエナメルパンプスが、遊び心をくすぐらせる。
だが、俺が声を大にして言いたい所は、そこじゃない。
頭部と腰から覗く黒猫の耳と尻尾は、一体なんだ! 俺を悶え殺す気か! しかも、よりによって、芥川君とお揃いだし、当の本人は、俺を無視するし。…こうなったら、俺も狼に変化してやる。
「がお〜っ」
「銀の狼に変化して、カカシも参戦するの?」
「もちろん。芥川君に、Aは渡せないし」
「
彼女の肩を抱き寄せれば、猫耳を生やした芥川君は、負けじと腰を抱き寄せる。こうすれば、他人の好意に鈍感なAも、おのずと意味が分かるだろう。
「…龍、羅生門しまって。カカシを殺す気か」
「欲する物の為なら、手段を選ばぬ」
「そこは同意できるな」
俺が微笑めば、病弱の羅生門使いは、眉間にシワを寄せて睨みつけた。積み重なった長年の気持ちに整理を付けるには、ちょうどいい。
「…A。驚かないで聞いて欲しい事がある」
「?」
芥川君は、察したようで奥歯を強く噛む。ほんの数秒が、とてつもなく長く感じられた。
「Aが好きだ。アカデミーの時から、ずっと」
「ありがとう。その気持ちも受け取るけど、ごめん。あたしは、龍が好きなんだ」
「…そうか。お幸せにね」
1997年10月15日、15時。
18歳の誕生日を1ヵ月前に迎えた俺は、恋敵の眼前で失恋した。
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時