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第15話 タイムリミットと恋心 ページ17

「A。話がある」
「何?」

 残暑が厳しい長月(ながつき)
 (やつがれ)が、この世界に来て3ヵ月が経った。

 何時ものように、ナルトを寝かしつけた後、居間で二人だけの時間を取っている。

「帰る時期が判った」

 水杯(コップ)に牛乳を注ぐ手が止まり、家主は背を向け、()えて(やつがれ)を見ようとしない。

「…そうか。…寂しくなるな」

 2ヵ月前の喧嘩以来、Aは、本当に辛い時、(やつがれ)の前だけ泣き顔を見せるようになった。声音だけで強がっていると判るのは、毎日接しているせいだろう。今も、何事もないような顔で、いつも使用する柄違いの水杯を電子レンジに入れ、起動させた。

「…いつになったの?」
「3ヵ月後だ」
「了解」
「A」

 (やつがれ)の方に振り返った彼女の目尻には、既に涙が溜まっていた。

「…無理をするな」
「無理などしていない。別れがあるのは最初から判っていた事でしょう? ……でも、本音は真逆。龍と別れたくないと思うあたしは、とんだ大馬鹿者だな」

 流し台の(ふち)を背にして笑う彼女の頬に、一筋の涙が伝った。

「あたしは、今まで、あなたの役に立った?」
勿論(もちろん)だ。Aの助力に感謝している」
「あと3ヵ月、龍は何がしたい?」
「…判らぬ」

 恩返しは出来たが、日に日に、『それだけでは足りない』と思う己も、胸中に居る。黙っている間、いつものように柄の違うマグカップに入ったホットミルクを受け取り、今夜は、ナルトが寝静まる部屋で考慮してみようと思った。


 事務職と、火影から直接回される里内に居る残党処理を両立し始めて、早1ヵ月が経つ。この異世界で衣食住を与えられ、何不自由無く暮らしていけたのは、全て榊Aのおかげだ。Aと居ると、毎日飽く事は無い。元の世界に居た時のような、暗く、退屈な日々になる。否。彼女が任務で外に出ている時、現にそうなっている。

()僕は、何処か()可笑しいのか?」

 ベッドが(きし)み、ナルトが起床した。

「…龍兄ちゃん。ねむれないの?」
「否。考え事をしていただけだ」
「ふーん。おれさ。兄ちゃんに本をかったってばよ。はい。どうぞ」

 手渡されたのは、一冊の本。『恋をしている10のサイン』を読破すると全ての項目が当てはまり、確信した。

 (やつがれ)は、Aに恋慕(れんぼ)の情を抱いていたのか。

第16話 黒猫達と狼の恋模様→←第14話 感情の正体



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 芥川龍之介 , NARUTO   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時

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