第11話 本音 ページ13
「A」
「おはよう」
「貴様、寝惚けているのか。未だ夕方だぞ」
「そうだっけ?」
女友達に連れられて以降、家主の様子がおかしい。先程の夕餉は、オムライスだったが、料理中に、マヨネーズとご飯を混ぜようとしていた。僕が、横に居て気づいたから良かったようなものを…。
「任務の疲れが残っているなら、早めに寝ろ」
「嫌だ。洗濯物が…」
「それは僕がやる。無理をするな」
「無理はしてない。あたしは大丈夫。まだ動ける」
「休め。働き過ぎだ」
「断る。家主の責任だ」
この家に住み着いて、1ヵ月弱。家主と接して、合計6日目。榊Aは、己で何もかも背負い、全く人を頼らない。弱音を一切吐かず、何時も、誰に対しても笑顔を浮かべている。
「たまには人を頼れ! 愚か者!」
「頼る期間は、もう終わった。あとは、あたしが全部やる!」
二人しか居ない居間に、快音だけが響く。
「忍の貴様が、
「疲れてなんかない。大丈夫だから…」
「二言目には、何時もそれだな」
右頬を赤く腫らしても屈する事無く、真っ直ぐ僕の目を見て、反論する女に内心感心した。
「貴様の『大丈夫』は、信用できぬ」
すると、拳を作って悔しそうに唇を噛み、目尻に涙が溜まっていく。
「そう言わないと…、そうやって言い聞かせないと、自分が壊れそうで嫌なんだよ! 頼れる人も、愚痴を言い合える人も、気を許せる人も、甘えられる人も、もう居ない。あたしが、しっかりしないと、オサムとか、ナルトとか、龍が危険な目に遭うから…」
堰を切ったように言葉と涙がこぼれていく。
「…それが本音か?」
「そうだ」
こくりと、一度頷く。その様子を見て、自然と体が動き、Aを抱き締めていた。
「『辛くなったら、何でも話す』と約束しろ。貴様は頑張り過ぎる。肩の力を抜け」
「…っ。もう、頑張らなくても、いいの?」
「然り。帰る日まで、僕が傍に居る。頼れ」
「…ふ、ぅっ。…っ」
それから、
「…だいじょうぶ?」
居間にあるソファーで、Aが寝静まっている時、寝間着姿のナルトが様子を見に来た。あれだけ大声で喧嘩し、泣かれたのだ。
「姉ちゃんがないたの、はじめてだってばよ」
彼女に欠けているのは、人に頼り甘える事。所詮、僕には不要の感情だ。
二人で、彼女を起こさぬよう毛布をかけた。
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時