第1話 路地裏 ページ2
(大丈夫?)
ぼんやりする意識の中で聞こえた女の声が、聞き慣れない。
降りしきる雨により、奪われていく体温。
嗅ぎ慣れない匂い。此処は、何処だ?
不意に、温かいものが額に当てられた。
「あんた、熱があるぞ」
「
なぜか、その温もりが心地良かった。
「路地裏で倒れてる病人を放置できるか。……ほら、寄りかかって」
虚ろな瞳に映るは、黒い背中。その背中に向けて、羅生門を発動する事もできた。
「…すまん」
「謝らなくていいよ」
耳に届くのは、壁にぶつかったようなくぐもった雨音と、快活に笑う女の声。僕の全体重を背中に受け止めた女は、ゆっくり立ち上がって数歩よろめいたが、着実に前へ進み歩いてゆく。しきりに体が訴える
「…ん」
「おはよう、と言っても、もう夜だけどな」
改めて、床に座っている女を視界に入れる。
赤。否。朱色の髪に、灰色の瞳。端正な顔に似合う穏やかな笑みに、何故か胸が苦しくなった。
だが、ふと気づいて、勢い良くベッドから起き上がった拍子に、額にかけられたであろう。冷水で濡らしたタオルが、手元に落ちた。それを、女が手に取り、冷水に浸す。
「…ッ! 外套はどこだ!」
数時間前まで、確かに着ていた外套がない。
「ああ。あれなら、他の服と一緒に浴室乾燥機で乾かしている最中だ。翌朝には乾いていると思うよ。まだ熱が高いから、入浴は我慢してくれ」
手拭いを絞る女の手は、冷たさからか、赤くなっていた。
「……」
桶に絞った手拭いをかけ、女が立ち上がった刹那、意思とは関係なく腹の虫が鳴り、恥ずかしく思い、顔を下に向ける。
「卵粥を作ってくるから、待っていてね」
「…すまん」
すると、どたばたと誰かが走ってきて、ばたんと戸を開けた。
「A姉ひゃん。ひあげ!」
「歯ブラシを口にくわえたまま走らない。危ないでしょ?」
金髪碧眼の幼子に、『仕上げ』と称して、少しずつ歯を磨いていく。二人が退室した、十数分後に、先程の幼子を引き連れて、女が戻ってきた。
「紹介が遅れたな。あたしは、榊A。よろしく」
「俺は、うずまきナルト! よろしくな!」
「
見慣れぬ彼女達の格好に、僕は、少しばかり混乱した。
「木の葉隠れの里へようこそ。芥川」
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年1月9日 23時