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第63話 普通の感覚 ページ16

「本当に申し訳ない。本来は、一族が処理すべき問題を、中也君にさせてしまった」
「あれくらいの事は、僕にとって日常茶飯事で、なんとも思っていません。貴方達は、医者で、異能に懇意にしている身なので、荒事は僕達に任せて下さい。…失礼します」
「どうぞ。遠慮しないでいいよ」

 着信音を奏でた電話応対のために、一礼して場を離れた中也の背後には、(ひい)お爺様が持っている提灯(ランタン)に照らされた無地で無機質な黒い結界があり、原形を(とど)めていないであろう元・叔父が収納されている。
 現場を目撃した身内が、婚約者の気配が遠くに行ったのを確認して、一様に縁側に懐中電灯やを携帯端末を置き、口元に手を当て、敷地内にある(トイレ)の方向へ散開していく行動の意味が解らなかった。裏庭には、絶賛隠居中の曾お爺様と、現在も『女帝』と呼ばれるお婆様。かつて『羊の妃』と呼ばれた自分が残される。

「あれが普通の人の反応だよ。A独りに、辛い責任を押しつけてしまったわね」
「いいえ。一度も辛いと感じた事はありませんよ。曾お爺様。お婆様。これで、一族の悩みの種も消えましたし、ゆっくり休まれて下さい。今日は、1日ありがとうございました」
「なんの。可愛い親族のため、一族のため。1つの出来事を見届けるのも、(わし)らの重要な役目であり、務めじゃ」

 快活に笑いながら親族に背を向け、石畳を上って縁側に上がり、灯りのついていない廊下へと消えていった。それから、『あの黒い結界を直属の部下に回収させる手配と、首領に処理後の報告をした』と、中也が態々(わざわざ)縁側まで伝えに来た。

「もう皆寝たのか?」
「いや。しばらくしたら、1人くらい此処に戻ってくるんじゃないかな」

 しばらくして、両親が憔悴した様子を隠した状態で、昼間に言っていた2種類の地葡萄酒(ワイン)と、4つのワイングラスを持参してきた。気さくに縁側に腰掛けて飲酒を勧めてくる。彼としては、結婚挨拶で話題に登った時点で気になっていたのに、目を輝かせて婚約者であるあたしに、律儀に許可を求めてくる。

如何(どう)する?」
「言わなくても解ってる癖に。大丈夫よ」

 特に断る理由も無くて、回収班が邸宅に到着するまでの時間潰しに、グラスを受け取り素直に頂く。

「お言葉に甘えて、頂きます」
「良かった。じゃあ、()ごう」

 先程とは打って変わり、上機嫌の父がそこに居た。

第64話 神崎一族の歴史→←第62話 公開処刑



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , イケメン女子   
作品ジャンル:恋愛
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エミリア1415(プロフ) - 薫染-ゆきせ-さん» 薫染ゆきせさん、コメントと応援。ご指摘ありがとうございます。意味を間違えて使っていました。教えて頂き、ありがとうございます。すぐに修正しますね。更新も頑張ります。 (2019年8月25日 21時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 此れからも更新頑張って下さい!2枠続けてのコメント失礼しました。あと 言葉運びが意図的なものだったらすみません! (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰ってます!89話の中の台詞についてなんですけど…内容的に「満身創痍」ではなく「五体満足」の方があっていると思いますよ。あの台詞だと「全身傷だらけで良かった。」みたいな意味になってしまうので…可也 上から目線ですね。すみません (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 銀桜さん、コメントありがとうございます。少しでも話を進められるように、更新頑張りますね。 (2019年8月22日 17時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
銀桜(プロフ) - あぁ、夢主ちゃんと大我くんが元に戻って良かったです。更新頑張ってください! (2019年8月22日 17時) (レス) id: 1194b2a018 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミリア | 作成日時:2019年6月30日 13時

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