第24話 サプライズプレゼント ページ25
「その服、似合ってる」
福岡に滞在五日目。
Aの先導で、福岡市内で買い物に付き合ってくれる彼女は、くつろいだ印象を受ける私服で隣を歩いている。Vネックの黒Tシャツに、前を開け放った状態のロングチェックのシャツワンピース。少し緩めのスキニージーンズに、真新しいサクラ色のスニーカーが足元を飾っていた。
「ありがとう。ユーリに褒められると、勉強した甲斐があったよ。気を抜くとどうしても、男と見間違われるような格好になるからさ」
おととい、俺に本心を打ち明けたAは、あれ以上過去を語らず、前よりも重たい口を開けて意見するようになった。
二人で募金箱に複数のコインを入れて、福岡キャッスル跡地を休憩を挟みながら巡った後、道向かいにある公園に着く。
「A。今から手を繋いで誘導するから、目をつぶれ。俺が『いい』って言うまで、絶対開けるなよ」
「了解」
あるテナントに入店して、カウンターまで突っ切る。
「着いたぞ。下を向いて目を開けろ」
眼下の物品と俺の顔を見比べて、次に周囲を見渡した。
「買い物って…」
「Aとのペアリングを買いに来た。好きなの選んでいいぞ」
自分の口元を片手で塞いで、『信じられない』と言いたげに視線を合わせてくる。
「福岡キャッスルに行くのは口実で、本当の目的はこれか。…本当にいいの? こんな高価な物を選んで」
「何度も言わせんな」
数分悩んだ末に選んだ色は、イエローゴールド。Aは、『来シーズンも金メダルを取れるように、願掛けの意味をこめた』らしい。俺の彼女、マジ最高! デザインは、シンプルな物を選んだ。レディースのほうは、数個の宝石が埋めこまれている。
数時間後の夜。福岡城跡地がある舞鶴公園で、夜景をバックに小さな箱を開けて恋人の右薬指に指輪をはめた。
「…現実なんだよな?」
「ああ」
両手を握って、こつんと額同士を軽く合わせる。
「彼氏の俺が、ユーリ・プリセツキーが、死に場所を探している野良猫を見つけて、Aの存在も過去も全部受け入れて、いつか『幸せだ』って言えるように、一生愛すると誓った証だ」
俺の想像だが、彼女は、幼い頃から大人の欲にまみれた世界で育った結果、本当の愛に飢えていた。恋人の涙腺が決壊する寸前に、ぎゅっと抱きしめる。
「Aは、十分頑張った。もう我慢しなくていい」
この一言がきっかけになって、Aは、今まで溜めこんでいた感情が爆発して、号泣した。
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エミリア1415(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます。ロシアに忍がいるとは、一言も書いていません。設定も盛り込み過ぎているとは思いません (2018年3月28日 12時) (レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - ロシアなのに忍とかあるわけないでしょ。設定盛り込みすぎて意味わかんない (2018年3月26日 16時) (レス) id: 826fa97ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年10月9日 22時