第12話 謝罪と仲直り ページ13
「ミラ。荷物頼んだ」
モスクワの空港に到着早々、俺のファン達が出待ちして、キャーキャー騒ぎ立てる。Aと比べたら、雲泥の差だな。俺が姿が見えるまで、ずっと黙って待ってるし。
空港を出て、迎えに来ているはずの爺ちゃんの車を目視で探して、爺ちゃんがぎっくり腰だという事も忘れて抱き着いた。そして、車の中でもらったピロシキを食べながら、日本で一番ハマったカツ丼の事を話して、一度言葉を切る。
「…爺ちゃん。Aの事、覚えてる？ 昔、俺と一緒のスケート教室に通ってた、黒髪の」
「…ああ。日本人にしては珍しい、灰色の瞳の子だったな。その子が、どうかしたのか？」
正直に電話の事と喧嘩した事を話せば、爺ちゃんが、前を見据えたまま、しばらく黙りこむ。
「あの子の父親と長年文通していたんだが、今回は彼女からきてな。…長谷津に滞在している期間に、本当の父親が見つかったそうだ」
その一言は、ピロシキを食べる口が止まるほど、衝撃的なものだった。
「昔会った父親は、養父。今回ロシアに来たのは本当の父親を探すためで、生還する約束をきちんと守って、無事にユーラチカの所へ戻って来たなら、それでいい。目標もなく死に場所を探している状態の野良猫が、帰って来るべき居場所を見つけたんだから」
ぽんぽんと落ち着かせるように、爺ちゃんが俺の頭をなでていく。
「いつか話してくれると信じて、気長に待てばいい」
俺を突き放したのは、今のAの許容範囲より奥に踏みこんだから。『構うな』と言ったのは、俺にとって大事な目標がある今シーズンに、ちゃんと集中できるように考えてくれたから。
「…爺ちゃん。俺、Aの事、全然知らなかった。謝らなきゃ」
選手に割り当てられたホテルに着くまで、なるべく目が腫れないように、声を押し殺して涙を流した。
自分の部屋に着いた時、ジャケットのポケットに入れっぱなしにしていたスマホが鳴る。
相手は、Aだった。日本との時差は、５時間。向こうでは、ちょうど日付が変わった頃か。
《もしもし？》
『こんばんは、ユーリ。…その、…この間はきつく言い過ぎた。ごめんなさい』
《謝るのは俺のほうだ。Aの事情、全然考えてなかった。ごめん》
お互い謝って、それで吹っ切れたように、同時に電話越しに笑いあった。
『明日、会場で応援するよ』
《スパシーバ。おやすみ、A》
『おやすみ、ユーリ』
明日、俺のアガペーが完成する。
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エミリア1415(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます。ロシアに忍がいるとは、一言も書いていません。設定も盛り込み過ぎているとは思いません (2018年3月28日 12時) (
レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - ロシアなのに忍とかあるわけないでしょ。設定盛り込みすぎて意味わかんない (2018年3月26日 16時) (レス) id: 826fa97ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミリア | 作成日時：2017年10月9日 22時
