第10話 安心できる場所 ページ11
「ヤコフは？」
「『来客だ』って外に行ったわ」
サンクトペテルブルグのホームリンクで滑っている最中、彼の姿が見えない事に気づいた。俺の問いに、リンクの端にいるミラが答える。
ヤコフに客？ 珍しいな。
もう一度練習しようと意識を高めようとした時、リンクにヤコフの声が響く。
「ユーリ。今日は、もう上がれ。お前に客だ」
「俺に？」
コーチの言う通りにリンクから上がって、廊下に出て、辺りを見渡す。逆光で分かんねぇけど、俺に向かって控えめに手を振る人影が見えた。
「ユーリ。お疲れ様」
「Aっ!!」
待ちわびた声の主に向かって駆け出し、抱きついた拍子に勢い余って壁に激突する所を、A自身のバランス能力でなんとかしのぐ。声にならない
「無事で良かった…」
「ちゃんと、ユーリとの約束守ったよ」
「…おかえり。A」
「ただいま。ユーリ」
この光景を、ヤコフとミラが離れた所で見ているとも知らずに、俺達は再会を喜んだ。
「ねぇ。ユーリと貴女って、どういう関係？」
食堂でババアの質問を受けて、答えに困っているAの代わりに、俺が答える。
「昔のリンクメイトだ。Aがいなきゃ、俺はスケート続けてねぇよ。わかったら、さっさと離れろ。仕事帰りで疲れてんだ」
「そうなの？」
「うん。もっと話したいけど、ごめんね」
ミラと二つテーブルを挟んで、距離を取って席に座る。
「A。なんか食う？」
「んー…。勧めてくれるのはありがたいけど、今は睡眠を優先して摂りたい…」
俺に返事しながら、もうまぶたが閉じていってる。そして、さりげなく、食事の邪魔にならない壁際に寄るのを、片腕で阻止するついでに腰に手を回した。
「寄りかかるなら、こっちにしろ」
「人の頭って、結構重たいんだけど…。大丈夫？」
「俺がいいっつってんだろ。遠慮すんな」
数秒間考えた末、遠慮より睡眠を優先した。
「…し、失礼します」
「おう」
ゆっくり左肩に頭を乗せ、ぽんぽんと頭を優しく叩き、さらさらの黒髪を撫でていた数秒後には穏やかな寝息をたて、即刻寝落ちした。
「なんだよ、この寝顔。クソかわいい…!!」
スマホのカメラを起動し、連写音を立てても起きないほど爆睡してる。
ロシアで愛しいAが安心できる場所は、俺の隣だけでいい。
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エミリア1415(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます。ロシアに忍がいるとは、一言も書いていません。設定も盛り込み過ぎているとは思いません (2018年3月28日 12時) (
レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - ロシアなのに忍とかあるわけないでしょ。設定盛り込みすぎて意味わかんない (2018年3月26日 16時) (レス) id: 826fa97ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミリア | 作成日時：2017年10月9日 22時
