第16話 芥川の妻 ページ18
「掴まり立ちした瞬間、見たかったなァ」
デジカメ片手に溜め息をつくAさんの足元に、長机の下をハイハイでやって来た良平君が、笑みを浮かべて姿を現す。
「ところで、我が子の成長を間近に見て、父親としてどう思った?」
「…芯の在る子だな」
「一寸待った」
中也さんが手で制し、会話を中断させた。
「誰が、その赤ん坊の父親だって?」
すると、微笑んだまま、座蒲団を降り、脇に正座されて、頭を垂れ、
「申し遅れました。いつも、主人がお世話になっています」
『…え?』
一連の綺麗な所作を前にして、又も戸惑う私達には、一つの事を理解する。
芥川先輩が、眼前の女性と結婚していた。
『えーっ!?』
ほぼ全員の驚愕の声が、客間に響く。
「Aさん。何かの間違いでは? 此奴と居ると不幸が…」
ゆっくりと頭を上げ、再び
「その様な事は、あたしが決めます。太宰さんが介入する事ではありません」
先日、先輩の身内と判明した銀に、素早く視線を向ける。部下は、大して驚いてはいないようだ。
「銀。芥川先輩が結婚していた事、知っていたのですか?」
「私も、先日知らされたばかりです」
「銀。
「判りました。
既に打ち解けている様子に、立原と広瀬さんも、如何反応して良いか判らずにいた。
「樋口も立原も、銃火器類は持って来ていないようだね」
「あ。ハイ」
「さか…あく…さん?」
「一葉。落ち着いて」
「さらっと名前で呼ばないで下さい」
「いいじゃねェか。減るもんじゃなし」
芥川先輩の奥方様なのだ。粗相は出来ない。私の人生、終わった。
「広瀬さん。母がお世話になりました」
「そうか。君が北川葛の娘か。…彼女とは、お互い助け合っていたよ」
自然に広瀬さんに話しかけている度胸に、感銘を受ける。ここで、改めて旅行に参加した者達の顔ぶれを確認した。
探偵社側は、眼鏡。包帯。虎の3名。ポートマフィア側は、中也さんと遊撃部隊。夢野久作の7名。
Aさんは、参加者は、多くて一桁と見、予想が外れたらしい。
中也さんと、国木田が視線を合わせ、同時に溜め息をつきたい衝動を抑え、榊家に頭を下げた。
『お言葉に甘えて、よろしくお願いします』
こうして、榊家全員の了承を確認して、宿泊先が決まった。
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エミリア1415(プロフ) - にゃんこさん。コメントありがとうございます。魅力的に書けるように頑張ります。 (2021年1月15日 15時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 芥川大好き。龍チャン愛してる。 (2021年1月15日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 白狐さん» 白狐さん、コメントありがとうございます。更新できるように精進しますね (2018年12月16日 17時) (レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あー、最高。全てが好き。更新頑張ってください。僕の為にも((( (2018年12月13日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - ありがとうございます。頑張りますね。 (2017年4月9日 15時) (レス) id: 738ed6759e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年3月12日 22時