第７話 エクバターナ攻防戦 ページ8
「父上。あれは…、シャプール殿ですよね？」
自分でも分かるほど、声が震えていた。父は短く肯定する。
城外で一人の捕虜が捉えられ、足元に血だまりを作っている。傍らに立っているのは、ボダンという大司教。真面目な万騎長が何を言ったのかは分からないが、大司教の怒りを買い、持っている杖で繰り返し殴打される。そして、シャプール殿が声をあげて我々に告げた。
「エクバターナの人々よ!! 俺のことを思ってくれるなら、俺を矢で射殺してくれ!! どうせ俺は助からぬ!! ルシタニアの蛮人になぶり殺されるより、味方の矢で死にたい!!」
直後、どこからか一つの矢が脳天を貫く。シャプール殿は遠くからあたしを見て、わずかに口端を上げ息を引き取った。
「おはよう。A」
「…おはようございます。父上」
父に稽古をつけてもらい、朝食を胃に流しこむが、どうしても戻してしまう。シャプール殿を失ってから、ずっとこんな調子だ。
城下へ向かうと、民は少しでも安堵を求め、あたしに問い尋ねてくる。
「A様。エクバターナはどうなるのでしょうか？」
「ルシタニアの手に渡らぬよう、我々が守っている。不安にさせてすまない」
一通り散策して、万騎長達の馬小屋を一つ一つ見回り、地面を掃いていく。彼らがいつ帰ってきてもいいように、留守番を言いつけられた時には、いつもこうしている。最後に、自分の馬小屋に来た。白馬が鼻を鳴らした。
「セフィード。あたしは…、怖い」
ぽたりと地面に染みが広がるのを気にせずに、愛馬に向かって話し始めた。
「このまま敵の手に渡ったらどうしよう？ シャプールが死んだ。他のマルズバーン達は無事か？ 殿下は？ 皆がいなくなったら、あたしは、今度こそ居場所を無くしてしまう。セフィード、…疲れた。戦うのに疲れたんだ」
ぶるると鳴き、頬をすり寄せる。
「誰か…助けてくれ」
女騎士の嘆きに答える人間は居ない。支えてくれる友は、今、愛馬のセフィードだけだ。
十日目。父上は『見るな』と言ったが、風に乗って腐臭が届いてしまった。万騎長達の首が並べられていく。
嗚呼。誰でもいいから、どうか嘘だと言って。
「ヴァフリーズ…！」
見たくなかった。あなたの生首がさらされるのは。
ダリューン。アルスラーン殿下。あなた達は逃げ延びたの？
どうか…。どうか無事でいて。
「A様!?」
大丈夫。
そう答えたつもりだった。だが、自分の予想に反して声が出なかった。
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エミリア1415(プロフ) - お久しぶりです、イヴィさん。季節は冬で、年末のマンハッタン。ベタだな…と自分でツッコミつつ、次の話を組み立てている最中です。 (2016年9月30日 10時) (
レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - キャー\(//∇//)\2人で旅行とは…！これはますます見逃せません！次話での展開楽しみです！ (2016年9月29日 23時) (レス) id: 5980d81e59 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - コメントありがとうございます。作者も、ここから話をどう組み立てるのか分かりませんが、最終的にはハッピーエンドにしたいと思います。 (2016年7月5日 22時) (レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - まさかの犯人ダリューン…これは予想外ですΣ（ﾟдﾟlll）驚きのMAXですどうなっちゃうの次話？！ (2016年7月5日 19時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - ありがとうございます\(//∇//)\凄く楽しみにしてたのでとても嬉しいです！何やら記憶も戻りつつあるようですし次回が今から待ち遠しいです！ (2016年6月22日 23時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミリア | 作成日時：2015年7月24日 22時
