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第36話 贈り物 ページ37

「久しぶり。ダリューン」
「ああ。久しぶりだな」
「はい。お土産」
「ありがとう。俺からも土産がある」
「あら。ありがとう」

 2026年2月14日。今日は、俗に言うバレンタインデーだ。
 甘さ控えめのブラックチョコレートを使用した手作りカップケーキを小箱に詰めて、晴れて婚約者になったダリューンに手渡し、一時の幸せを味わう。ちなみにあたしは、デリーモのマドレーヌを彼氏から大事に受け取り、待ち合わせた駅の小さなロッカーに預けた。ちなみに兄は、イリーナさんのために治一郎のバウムクーヘンをルミネ新宿店で購入したらしく、場所は違えどバレンタインデートを楽しんでいるようだ。
 そして、交際して1ヵ月も経てば、(かたく)なに敬語だったダリューンもタメ口に慣れてきたようで、今はもう敬語になるほうが違和感がある。どちらともなく互いの手に触れて、手を繋ぐ行為はまだ緊張するし、季節が冬という事もありわずかに指先が震えたが、それを察知されて暖めるかのように若干強く握られた。

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「困った事があったら、いつでも言ってくれ。できる限り力になる」
「もうあたしの力になってるよ」

 ダリューンとヒルメス兄さんが通っている学習院大学からほど近い池袋が今回のデート場所で、さっそく南池袋公園に向かい、レジャーシートを広げてゆっくり(くつろ)いでいる。年寄りじゃあるまいしという声が聞こえてきそうだが、にこやかに聞き流していった。

「本当にいいのか? 寒空の下で」
「温かい珈琲(コーヒー)とあなたさえ傍にいれば、あたしは他に何もいらないの」

 ぴしゃりと言ってみせれば、彼は引きつった笑みを見せた。


 学習院大学の卒業式を終えた2日後。
 アメリカに帰るという情報を自由人のギーヴから入手して、羽田空港に(あわ)てて搭乗時間前に間に合うようにバスで向かい、笑顔で婚約者である彼に告げた。

「遅くなったけど、卒業おめでとう。ダリューン」
「ありがとう、A。これから遠距離になるけど、大丈夫か?」
「大丈夫よ。遠距離なんて微々たるものだから、あたしは全然(さび)しくない。安心して行ってらっしゃい」
「嘘をつくな」
「いったッ…! ごめんね」

 本当は寂しい癖に強がって告げるのが簡単にバレてしまったのは、単に家柄や大学まで続いてきた長い付き合いだけではないから、地味に痛いデコピンもなんとか我慢できるというものだ。

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設定タグ:アルスラーン戦記 , ダリューン   
作品ジャンル:恋愛
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エミリア1415(プロフ) - お久しぶりです、イヴィさん。季節は冬で、年末のマンハッタン。ベタだな…と自分でツッコミつつ、次の話を組み立てている最中です。 (2016年9月30日 10時) (レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - キャー\(//∇//)\2人で旅行とは…!これはますます見逃せません!次話での展開楽しみです! (2016年9月29日 23時) (レス) id: 5980d81e59 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - コメントありがとうございます。作者も、ここから話をどう組み立てるのか分かりませんが、最終的にはハッピーエンドにしたいと思います。 (2016年7月5日 22時) (レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - まさかの犯人ダリューン…これは予想外ですΣ(゚д゚lll)驚きのMAXですどうなっちゃうの次話?! (2016年7月5日 19時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - ありがとうございます\(//∇//)\凄く楽しみにしてたのでとても嬉しいです!何やら記憶も戻りつつあるようですし次回が今から待ち遠しいです! (2016年6月22日 23時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミリア | 作成日時:2015年7月24日 22時

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