第17話 夏祭り ページ18
「エステルも浴衣を買いに来たの？」
「ああ」
照れながら肯定する様子を見て、頭をなでたくなる気持ちを抑えた。
「Aもこれがいいのか？」
「他にも気に入った柄があったから、それにする」
「ありがとう」
エステルの後ろで笑顔を浮かべているアルに対して、微笑み返し、別の柄を購入した。
当日、花火大会の会場での集合で、いつものメンバーがそろった。
「Aお嬢様。よくお似合いです！」
「ありがとう。ザンデ」
頭から垂れ耳を生やし、腰から尻尾をぶんぶん振って、全身で喜びを表現しそうなザンデが真っ先に誉めてくれる。幻覚が見えるとは末期だなと思い、その隣で先を越されたのか、ちょっと不機嫌な表情を見せるダリューンがいた。
「どうした。しかめっ面して」
「うるさい」
美術大学に落ちて、学習院大学の試験に受かったナルサスが親友をおちょくる。ちなみに、アルフリードはこの時点でナルサスの腕にぴったりくっついて、すっかりご満悦だ。エステルはというと、アルスラーンの満面の笑みと『似合っているよ』という褒め言葉で、早くも顔をりんごみたいに真っ赤にしている。
「あなたがAお嬢様か！ うわさ通りの美人だ。女神に出会えたことを、神に感謝しなくては！」
褐色の肌を持つ、ギーヴに次いで信用できないツラの青年が、両手を大きく広げて距離を詰めてくる。初対面の女性に抱きつこうとするは、どんな文化圏で育ったのかと疑いたくなるほどで、体が無意識に後ずさりした。その行動を止めるように、彼の後ろにいた青年が制止をかける。
「ラジェンドラ様。いきなりそのような態度を示しては、相手が警戒しますし、なにより無礼です」
「正論を言ってくれて助かる。ジャスワント殿」
ダリューンが、エメラルドに近い瞳を持つ彼の肩を親しげにぽんと叩き、ラジェンドラが顔をしかめている間に、ダリューンがあたしの隣に歩み寄った。ごく自然に近づいてきたものだから、彼に言われるまで気づかなかった。
「参りましょう。Aお嬢様」
すでに会場は盛り上がりを見せている。
屋台からは腹の虫を騒がせるいい匂いが辺り一面に漂い、客は欲しいものを得て、あちこちから笑い声が絶えない。人ごみに紛れる前に、彼はそっとあたしの手を取る。
「こうすれば、はぐれる心配はございません」
護衛だと分かっているが、胸が高鳴る。それをごまかすため、あたしはこう叫んだ。
「屋台へ行くぞ、ダリューン。ヤシャスィーン！」
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エミリア1415(プロフ) - お久しぶりです、イヴィさん。季節は冬で、年末のマンハッタン。ベタだな…と自分でツッコミつつ、次の話を組み立てている最中です。 (2016年9月30日 10時) (
レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - キャー\(//∇//)\2人で旅行とは…！これはますます見逃せません！次話での展開楽しみです！ (2016年9月29日 23時) (レス) id: 5980d81e59 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - コメントありがとうございます。作者も、ここから話をどう組み立てるのか分かりませんが、最終的にはハッピーエンドにしたいと思います。 (2016年7月5日 22時) (レス) id: 37abc421ec (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - まさかの犯人ダリューン…これは予想外ですΣ（ﾟдﾟlll）驚きのMAXですどうなっちゃうの次話？！ (2016年7月5日 19時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
イヴィ - ありがとうございます\(//∇//)\凄く楽しみにしてたのでとても嬉しいです！何やら記憶も戻りつつあるようですし次回が今から待ち遠しいです！ (2016年6月22日 23時) (レス) id: 1461fa90cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミリア | 作成日時：2015年7月24日 22時
