▽ ページ30
✼ ✼ ✼
もう最後は何を言っていたのか正直覚えていない。
泣きじゃくって、彼のもとから離れて、昨夜は自室に引きこもっていた。
そして今日は朝から他のことに没頭してしまおうと、彼と顔を会わせないように家を出て大学に来ていた。
そのお蔭で今日の予定は昼には終えてしまったが。
「あー……それで今日なかむは欠席なのか」
隣を歩きながら一連のことを話せばきんときは苦笑した。
その顔は私たちに何かあったと相談すれば、良く見てきた顔でもある。
「……私たち花食み同士、よくここまで来れたなって思うよほんと」
「何終わりみたいなこと言ってるの」
「……」
「……A？」
ぴたりと足を止めて黙り込んだ私の顔をきんときが覗き込んでくる。
それに思ったよりも自分が下を向いていたことに気づいた。
「……きんときはさ、花生みで。あの子は花食みじゃない？」
「そうだね」
話の前後が繋がっていない問いかけにもきんときは頷いてくれる。
彼の恋人は私の友人で。
同じ、花食みであり、よき相談相手でもあった。
「彼女も、決して安定している方では無かったけど。きんときと出会ってから見違えるように変わったから。」
彼女はきんときと付き合う前は私と同じように、時々不安定な気持ちを吐露していた。
けれでそれは彼から花をもらうようになって、人目にもわかるくらい落ち着いたのだ。
「……それはAも花が必要ってこと？」
きんときの問いかけに首をふる。
開きかけた口を一度閉じるが、どうしても頭の中でぐるぐると回っている思いが口を出ていった。
「……なかむにこそ……必要なんじゃ、ないかって……」
それはずっと、それこそ付き合う前から付きまとっていた考えではあった。
それでも今まで口に出してこなかったのは、それを言ってしまったら終わりな気がしたからだ。
花食みには花生みが必要だなんて。
そんな当たり前のこと。
「抗うつ剤は私もなかむも飲んでるけど、これ以上増やせないし……」
「Aは……別れたい訳じゃないんでしょ」
そのきんときの確信しているような言い方には迷いなく頷く。
そんな当たり前のことを置いといたとしても。
それでも彼と一緒にいたかった。
彼もそう言ってくれたから付き合い始めたのだから。
でも好きだからこそ……愛しているからこそ。
彼が苦しんでいるのを見ているのは辛かった。
✼ ✼ ✼
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 308人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらたま。(プロフ) - 玲さん» ありがとうございます✨ (12月30日 0時) (
レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - お仕事お疲れ様です (12月29日 23時) (レス) @page50 id: db3c5f0a70 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - なすかまさん» いつもご丁寧にコメくださりありがとうございます！とても嬉しいです^^ やはり皆様の反応は気になりますのでこうしてご感想頂けるのはとてもありがたいです。モチベになります！気ままに頑張りますので、今後もよろしくお願いします!! (11月29日 22時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
なすかま - 遅くなりましたが、８冊目、おめでとうございます！そして私は幸せです、、、なんといっても、brさんの誕生祭にこんなドキドキキュンキュンするものが読めるなんて、、、。幸せ以外のなにものでもありません！お忙しいとは思いますが、頑張ってください！ (11月29日 21時) (レス) id: 257f27a87a (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - すみれいんさん» コメありがとうございます！バース書いたらすみれいんさんがいらっしゃるかなと思ってました笑 Ωよりこっちの方がなんか病んでる人は多くなりそうです……はい^^; 誤字お目汚し失礼しました！全然そのままで大丈夫ですよ。ありがとうございます！！ (11月17日 22時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しらたま。 | 作成日時：2023年11月16日 15時
