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始業式の初日は部活も委員会もない。
早い時間の帰宅中に思い出すのは、朝出くわした幽霊のことだった。
友人たちと別れてから閑静な住宅街を進む。
視界の向こうに見えてきたのはまずあの立派な桜だ。
たった一本の桜だったが地域の人々に大事にされてきたのだろう。
この場に似つかわしくない大きさのそれは、今が見頃だと言わんばかりに花びらを散らしていた。
ただ俺が気になったのはその桜の下だった。
そこに彼女の……Aの姿は見えない。
なんだ、やっぱり俺が夢でも見ていたのか。
肩透かしを食らったような気分でその桜まで近づく。
そういえばこの桜をまじまじと見たことはなかった。
そう思って上を見上げた時だった。
『あ！スマイル！！お帰りなさい！』
「……ああ。いたのか」
厳密にはこの桜は公園の敷地内に植えられている。
大きい枝葉が住宅街の道路側に伸びているだけなのだ。
その公園側に彼女はいた。
彼女は俺との間にあるフェンスをするりと抜けて近づいてくる。
……そういう場面を見ると、人ならざるものなのだと実感するな。
『早いね？』
「今日は始業式だったからな」
『ふ〜ん』
彼女はわかっているのかいないのか。
少し首を傾げてそう言った。
それにならって彼女の長い髪がさらりと肩から流れ落ちる。
……幽霊って重力あるのだろうか。
『あ、というかスマイルって呼び捨てちゃって良かった？』
「タメ口で話しているのに何を今さら」
『確かに』
そう言って笑う彼女は、なんらクラスの女子と変わらない気がした。
それでも確かに彼女は透けていて、足元は無くて＿＿＿俺以外には見えていないし、声も聞こえない。
1人喋っている俺は傍から見たら不審者かも知れない。
それでもこの閑静な住宅街の昼過ぎに人はおらず、ましてや寂れたブランコと今にも朽ち果てそうなベンチが1つあるだけの小さな公園には人っ子一人いなかった。
こんなに立派な桜があるというのに。
俺はぐるりと公園を見回してからAに問いかける。
「お前、成仏しないのか？」
それに彼女はきょとんとする。
本当に表情が豊かなやつだ。
先程クラスメイトと何ら変わりないと思ったが、こんなにころころ表情を変えるやつはいないかも知れない。
Aは考え込むように額に手を当ててう〜んと唸った。
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しらたま。(プロフ) - おださん» おださん初めまして！コメありがとうございます!! 今回は特に高校生らしい純粋さ、真っ直ぐさ、大人への移り変わりみたいなのを意識しているので、そう言って頂けるのは非常に嬉しいです^^！ 駆け足ではありますが、最後までもう少しお付き合い頂けたら幸いです🍀*゜ (3月8日 16時) (
レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - (続き失礼します。) この先の結末が別れしかないからこそ言えなかったり、できなかったりすることもあるだろうに、全員で人のためを思って行動できる人をただそういう風に描けるしらたま。様の文体が、一層登場人物の純粋さを引き立たせていて大好きです。 (3月8日 16時) (レス) id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。純粋に真っ直ぐにお互いを思い合って、周りの友人もそんな二人を見守って全力で協力して、お互いを尊重し合っている関係と物語に切なくなります。→ (3月8日 16時) (レス) @page48 id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しらたま。 | 作成日時：2024年2月29日 20時
