┆ ページ43
✼ ✼ ✼
ふと、昨日の事を思い出す。
横で本を読んでいた彼女は逐一その内容に驚いたり悲しんだり、すぐ表情に出るものだから。
器用なものだなと、ずっとこっそり見ていたりした。
本人は、読むのに夢中で全く気づいていなかったが。
その姿が脳裏をよぎって、少し広角が上がる。
「あ、今思い出し笑いしたでしょ。むっつり〜」
「別にAのこと思い出したわけじゃ……」
「僕Aちゃんのことだなんて言ってないけど」
「……」
にしし、と笑うぶるーくをじとっと睨む。
こいつのこういうところは少し苦手だ。
これ以上おちょくられるのも嫌なので、会話を元に戻す。
「女性としては……そうだな。綺麗な人、だと、は思う……」
「歯切れ悪いね」
「あまり周りにはいないタイプだとは思うが、」
飛び抜けて物凄い美人というわけではない。
口を開けばどちらかというと幼い印象になるし。
でも、雰囲気美人とでもいうのだろうか。
黙って少し伏し目がちに俯く彼女には、はっとさせられることがある。
そのことを少し、いや所々誤魔化しながら話す。
まぁどうせこいつにはおおよそバレているのだろうけど。
半ば諦めながら何を言われるだろうかと思っていれば、想像とは裏腹に静かな声がした。
「ね、スマイルはさ、Aちゃんのこと好き？」
「……あいつは幽霊だろ」
「だから、そういうの抜きにして」
そんなこと言われたって。
そう反論しようと思った。
が、振り返った先のぶるーくが思った以上に真剣な顔をしていたから。
俺は黙り込んで足を止めてしまう。
じっと少し先の床を見ていれば、隣でぶるーくの足も止まったのが分かった。
「……好き……なんだと、思う……」
震えた小さな声が廊下に転がる。
口にしてしまえばたった２文字のこと。
初めて自分の意思で形にした、呆気ない音の欠片。
けれど、それを一度言ってしまえば取り返しがつかなくなったような気がした。
✼ ✼ ✼
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらたま。(プロフ) - おださん» おださん初めまして！コメありがとうございます!! 今回は特に高校生らしい純粋さ、真っ直ぐさ、大人への移り変わりみたいなのを意識しているので、そう言って頂けるのは非常に嬉しいです^^！ 駆け足ではありますが、最後までもう少しお付き合い頂けたら幸いです🍀*゜ (3月8日 16時) (
レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - (続き失礼します。) この先の結末が別れしかないからこそ言えなかったり、できなかったりすることもあるだろうに、全員で人のためを思って行動できる人をただそういう風に描けるしらたま。様の文体が、一層登場人物の純粋さを引き立たせていて大好きです。 (3月8日 16時) (レス) id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。純粋に真っ直ぐにお互いを思い合って、周りの友人もそんな二人を見守って全力で協力して、お互いを尊重し合っている関係と物語に切なくなります。→ (3月8日 16時) (レス) @page48 id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しらたま。 | 作成日時：2024年2月29日 20時
