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✼ ✼ ✼



「そりゃね……友人が辛い思いするのわかってて、応援はできないよ」



例え2人が想い合ったとしても……。
そう言って少し下を見るきりやんに俺は少し首を捻った。



「でもさ、そんなこと……あの2人が1番良くわかっているんじゃないの?」



結局、“恋”については当事者なのはあの2人で、所詮どこまでも俺たちは外野なのだ。


俺らはノートでの筆談でしか彼女を知らない。
それでもにじみ出る人柄は素直で明るく、ある意味スマイルとは反対の、ごく普通の女の子という印象だ。
そしてとても優しいだろうことも分かる。
俺らの心配を察して、ノートの文字を必死に綴って、自分がいかに無害かと訴える様には少し笑ってしまったくらい真っ直ぐだし。

スマイルを好きだと語るその文字は、顔が見えないのに恋する少女そのものだった。
でもそうして色々と書くことによって、まるで自分にも言い聞かせているようでもあった。



「恋しないようにしていても、しちゃう時はしちゃうよ。きっと。」

「さすが恋してるやつは違うね」

「茶化すなよ、真面目に答えてやってるのに」



きりやんの懸念が分からなくもない。
誰が身近な人に茨の道を進んで欲しいと思うものか。
でも、そう思って抑えられるなら昔の人は皆とっくにそうしているだろう。

俺は難しい顔しているきりやんに少し笑った。



「俺はスマイルが彼女に恋してるって認めるなら……その時は俺も覚悟を決めようと思うよ」

「覚悟?」

「そ。Aちゃんが……いなくなった後の覚悟」



世間は幼い恋だと、幻に夢見ていると笑うだろうか。
俺たちは集団幻覚を見ていると諭されるのだろうか。

例え仮にそうだったとしても。
友人が苦しんでいるか否か。
大人が言う幼い俺たちにとっては、それが全てではないだろうか。



「結末は予想できないけど……別れが決まっていて、苦しむことが決まっているなら。俺に出来るのは一緒にいてやることぐらいだから」



だから何十年でも、共にいる覚悟を決めようじゃないか、と。
そう笑って言えばきりやんはお前馬鹿だな、と彼も笑った。



「そんなの……きんときだけじゃなくて俺らみんなそう思ってるさ」

「うん……」



別れが決まっているとしても。
願わくば、ふたりの物語がハッピーエンドで終わるといいのだけれども。



騒がしい彼らの方へと視線を移せば、宙を見ていたスマイルが少し笑ったのが見えた気がした。





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しらたま。(プロフ) - おださん» おださん初めまして!コメありがとうございます!! 今回は特に高校生らしい純粋さ、真っ直ぐさ、大人への移り変わりみたいなのを意識しているので、そう言って頂けるのは非常に嬉しいです^^! 駆け足ではありますが、最後までもう少しお付き合い頂けたら幸いです🍀*゜ (3月8日 16時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - (続き失礼します。) この先の結末が別れしかないからこそ言えなかったり、できなかったりすることもあるだろうに、全員で人のためを思って行動できる人をただそういう風に描けるしらたま。様の文体が、一層登場人物の純粋さを引き立たせていて大好きです。 (3月8日 16時) (レス) id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。純粋に真っ直ぐにお互いを思い合って、周りの友人もそんな二人を見守って全力で協力して、お互いを尊重し合っている関係と物語に切なくなります。→ (3月8日 16時) (レス) @page48 id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しらたま。 | 作成日時:2024年2月29日 20時

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