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「お前、何言って……」



そう言いかけた言葉は彼女が立ち上がり、足元が見えたことによって続かなかった。
……いや、足元が“見えなかった”からと言った方が正しいだろうか。

それだけではない。
よく見れば彼女の身体は全体的に“透けて”いた。

彼女はぱぁっと顔をほころばせるとにっこりと微笑む。



『うわ、嬉しい!誰にも見えていないようだったし、もちろん話しもできなかったから』

「……なっ……は、ッ!?」



非科学的なものを端っから否定するつもりもないけれど。
それでも、どうにもこの目の前の光景をすんなりとは受け入れ難かった。

変な声が出そうになるのを何とか堪える。
その震えた口から出てきたのはなんとも情けない音だった。



「ほん、ものか……?」



昨夜はちゃんと寝たから寝不足で幻覚を見ているってことは考えにくいし……。
まさか深層心理では、実は新学期が嫌で現実逃避しているとか?

その言葉に女子生徒は一瞬きょとんとするものの、こちらの意図を理解すると笑って頷いた。
そして空中でくるりと回って見せる。



『どうやらそうなんだよ。いや〜私も幽霊になったの初めてだから、よくはわかんないんだけどね』



初めてって……そりゃぁ普通は1回だけだろう、なんて言える訳もなくて。
黙り込んでいる俺に、その女子生徒……の幽霊はにこにこと話しを続ける。

確かにその喋っている間にも、ひらひらと舞い落ちていった桜の花びらは、彼女の存在をまるっと無視して地面に落ちていった。



『1週間くらい前に気づいたらこの桜の下にいたんだけど、自分の名前以外は分からなくて……誰にも見えないし話しかけられないしで人生積んだなって。まぁ、積んでるから幽霊なんだろうけども』

「はぁ……」

『あ、ごめんなさい初対面の人にべらべらと……。久しぶりに話せる人……というか記憶上初めて話せる人にテンション上がっちゃって』



そう言って先程とは打って変わって、申し訳無さそうな表情をする。
よくもまぁこんな短時間でころころと感情が変わるものだ。
何だか良くわからない感心をしてしまう。




✼ ✼ ✼

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しらたま。(プロフ) - おださん» おださん初めまして!コメありがとうございます!! 今回は特に高校生らしい純粋さ、真っ直ぐさ、大人への移り変わりみたいなのを意識しているので、そう言って頂けるのは非常に嬉しいです^^! 駆け足ではありますが、最後までもう少しお付き合い頂けたら幸いです🍀*゜ (3月8日 16時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - (続き失礼します。) この先の結末が別れしかないからこそ言えなかったり、できなかったりすることもあるだろうに、全員で人のためを思って行動できる人をただそういう風に描けるしらたま。様の文体が、一層登場人物の純粋さを引き立たせていて大好きです。 (3月8日 16時) (レス) id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)
おだ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。純粋に真っ直ぐにお互いを思い合って、周りの友人もそんな二人を見守って全力で協力して、お互いを尊重し合っている関係と物語に切なくなります。→ (3月8日 16時) (レス) @page48 id: dd244e2324 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しらたま。 | 作成日時:2024年2月29日 20時

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