【WT】きみは桜【kn】[完]

よんまい。 ページ10

✼ 🌸 ✼



「後悔が、あるんじゃないかって」



ぶるーくのその言葉にどきりとする。
いつの間にか下を向いていた視線を上げれば、彼は「きんときがね」と話しを続けた。



「お酒弱いのにさ、酔っ払った時があったんだけど」

「え！？だ、大丈夫だったの？」

「あぁ平気平気。ほんの少しだったから。まぁでもあの時が一番酔ってたんじゃないかなぁ」



そっか、と思うと同時に、それは私と別れたからなのだろうかと胸がざわめく。



「その時にね、言いたいことを伝えられなかったことを後悔しているって」

「……」

「それと同じことを最近また言ってたんだ」

「え？」



てっきりそれは別れた数年前の話かと思っていたのに。
驚いている私の顔を見て、ぶるーくは苦笑した。



「平気なふりしてるけどさ、前に進めていないんじゃないかなぁなんて」



覚えのある言葉に心のざわつきは収まるどころか、際立ってくる。
ぎゅっとコーヒーカップを握りしめる私にぶるーくは続けた。



「きんときと会うこと、考えてみてくれないかな。久々に会った友人からのお願いだと思ってさ」

「……考えてみる」



その後はまた他愛もない話しをして、別れる間際にぶるーくはそうだ！と内緒話のようにあのね、と口元に手をあてて私の耳元に寄ってきた。



「会うか会わないかの判断材料のひとつとして、きんときのスマホのロックの暗証番号教えてあげる」

「え？いやいや、それはだめじゃない？てか何の判断材料？は？」

「メンバー全員知っているしだいじょーぶだって。その番号はね＿＿＿」



何が大丈夫なんだ、と止める間もなくぶるーくは4桁の番号を口にする。
それを聞いて息を飲んだ私を満足気に見て、じゃあまたねと手をふって颯爽と去っていった。



私はその背中を無言で見送ってからも、しばらく唖然とその場で立ちすくんでいた。


その数字はよく知っている。
だってその番号は……



私の誕生日だ＿＿＿











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