さんまい。 ページ9
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「正直に言って良い……?」
「もちろん」
「分かんないの」
ぽつりと出てきた言葉は、嘘偽りはなかった。
「会ってない時間が長すぎて。それに別れてすぐは必死に彼のこと忘れようと、していたから……」
「うん」
そもそも別れたのも、忙しさゆえにすれ違っていて。
会えない時間の寂しさや憤りを、幼さ故に上手く表現出来なかった私が、耐えられなくなって別れを告げたのだ。
決して彼のことを嫌いになったから、ではなかった。
それでもあの会えない状況が続いた所で、あの時の私には未来が見えなかった。
どろどろしたものを抱え込んだまま、彼のことを応援することができなかった。
「今は、幸せになってくれていたらいいな、とは思ってる」
過去の恋人の幸福を願う気持ちは、それはだけでは恋愛感情とはいえないだろう。
自分と関わっていた人が、幸せになって欲しい。
それは友愛でも成立する気持ちなのだから。
たどたどしく、そう伝えればぶるーくは頬杖をつきながら少し微笑んだ。
「でも、『もう好きじゃない』とは言わないんだ」
「それは……」
言いよどむ私にぶるーくはにやりと笑う。
それは高校生の時の記憶にある、悪戯をする時に彼がよくしていた表情だった。
「ぶるーく悪い顔してる」
「はは、ごめん、そんなつもりはないんだけど」
ぶるーくはそうだなぁと少し考え込んでから、頬杖をやめて姿勢を正した。
そんな彼につい私も背筋が伸びてしまう。
何を言われるのだろう、と身構えていれば彼は突拍子もないことを良い始めた。
「Aちゃんさ、1回きんさんと会ってみない?」
「は……?え?」
聞き間違いかと思ったが、ぶるーくはそれ以上何も言わない。
何かこの急なことを言い始めるのも彼らしいなぁなんて、思ってしまった。
「それは……」
「部外者が口出すことじゃないんだけどさ、2人ともちゃんと話し合いしないで別れたんでしょ?」
「……」
ぶるーくがきんときからどんな話しを聞いているのかはわからない。
けれどもそれはあながち間違いではなかった。
半ば、私が話し合いを拒否した形にはなっていたが。
彼もそれを受け入れて、わかったと頷いただけだった。
静かな終わりには違いなかった。
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しらたま。(プロフ) - 成瀬 紬さん» コメありがとうございます!曲に気づいて頂けたならとても嬉しいです!! この曲の雰囲気を少しでも感じていただけたなら幸いです。また同じアーティストさんで違う曲のお話も考えているので、ぜひ今後もよろしくお願いします! (1月4日 9時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 紬(プロフ) - コメント失礼します!やっぱりあの楽曲からきてたか〜!とあとがきを読んでにこにこしております。歌詞がすごくわかりやすく綺麗に噛み砕かれていて、また、オリジナルストーリーとの合わせ方にとても引き込まれました!素敵な作品をありがとうございます! (1月4日 3時) (レス) @page20 id: ef4b6a6fe1 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - コメありがとうございます!!感想頂きとても嬉しいです^^ 遠回しになり過ぎないように頑張ったので、そう言って頂けると非常に救われます。また桜はまさにその通りですw もう、彼しかいないだろうと笑 番外編もお待ち頂けると嬉しいです✨ (12月17日 21時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - あと、桜をモチーフ?にしているのが最近のりすばらを思い出せて最高でした! (12月17日 21時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - とても面白かったです!しらたま。さんの表現の仕方がとても上手でこのお話の世界観に引き込まれるようで最高でした!これからも頑張って下さい! (12月17日 20時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらたま。 | 作成日時:2023年12月14日 20時