【WT】きみは桜【kn】[完]

にまい。 ページ8

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雨が窓を叩く音が響き渡る。

スマホにはきんとき以外の友人の写真もある。
それを見て思い返すのは先月の出来事だった。










それは寒さがひときわ際立つ、よく晴れた冬晴れの日のこと。




「ひょっとしてAちゃん……？」

「ぶるーく？」



同窓会にも出ていなかった私が、就職してから高校の同級生とばったり出くわしたのはそれが初めてだった。
記憶の中の彼も背は高かったけど、身体つきや顔の輪郭がしっかりしていて、間違いなく大人になっていた。

ぶるーくは私の返事を聞いてぱっと笑顔になる。



「え！久しぶり！！うわ、懐かしぃ〜今時間ある？少し話せる？」

「久しぶりだね。うん、大丈夫だよ」



近くにあったコーヒーショップに腰を据えて、近況なんかを報告しあう。
高校生の時だったら2人共、間違いなくバレンタイン期間限定のチョコレートドリンクを選んでいただろうに。
お互いの手元のブラックコーヒーに、妙な月日の流れを感じて2人して笑ってしまった。



動画をたまに見てるといえば、少し照れくさそうに、それでいて楽しそうにそれについても話してくれる。

ぶるーくはもちろん私と彼、きんときが付き合っていたことを知っている。
当然ながら別れたことも聞いているだろう。

それなのにこちらを気遣ってなのか、そのことどころか、彼の話題には一切触れてこなかった。
相変わらず優しい友人だ。

でも、耐えきれなかったのは私の方だった。



「その……きんときは、元気？」

「そうだね……元気といえば元気だよ。動画の通りかな」



ぶるーくは少し迷いながら、控えめにそう口にした。
元気ならいいのだ。
それにそっか、と少し微笑めば、逆にぶるーくは複雑そうに苦笑した。



「ね、答えたくなかったらいいんだけど、聞いてもいいかな？」

「何？」

「今、恋人とか旦那さんは？」

「いたらぶるーくと2人でお茶してないって。ぶるーくは？」

「僕もいないよ」

「モテそうなのに」

「今はいいかな」

「そっか」

「今でもきんときのこと好き？」



流れるような会話がそこで初めて止まった。

その直球な問いかけは、いかにもこの友人らしかった。
真っ直ぐとこちらを見てくる瞳は、きっと大人になった今なら、誤魔化したらそれを受け入れてくれるだろう。

それでも目を合わせられなくて、少し冷めてきたコーヒーに口をつけた。





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