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✼ 🌸 ✼
「ぷっ、きんときハマってないじゃん」
「俺太ったかな〜?」
その情けない声にふたりして顔を見合わせて笑ってしまう。
そう、彼の指輪は第2関節の上でストップしていた。
うーんと真面目くさってしげしげと自分の手を眺める彼が可愛くて、つい笑みが深くなる。
「違うよ。前より手が大きくなったんだよ」
「えーそういうこと?」
成長したということなのかな。
私の記憶よりも男らしく骨ばった手は、確かに全体的に大きくなっていると思う。
それを見ながらこの指輪を買ったお店を思い返した。
「サイズ直し、してくれるんじゃないかな」
「今度行ってみるか」
「そうだね」
ついでにせっかくだからクリーニングもしてもらおう、なんて呑気に考えていると、なにやらきんときが緊張した様子でこちらを見ていた。
それにどうした?と首を傾げて言葉を待ってみれば、彼は少し迷いながら私の両手をそっと握ってくる。
そして目を合わせると意を決したように、ぐっと口元に力を入れた。
「あの、さ」
「はい」
「今度……改めて指輪を贈っても、いいかな」
「ん……?」
その言葉の意図が分からなくてきょとんとしてしまう。
きんときは耳を真っ赤にしながら言った。
「A……俺と、結婚を前提に付き合って欲しい」
「……え?」
「再会したばっかりだとかあるかも知れないけど、俺にはもうAしか考えられないから」
そう、真っ直ぐこちらを見る瞳に、私の身体にもじわじわと熱が這い上がってくる。
黙っている私に彼は焦った様子で言葉を続ける。
「あ!もちろん、返事は今すぐじゃなくて「結婚する」
食い気味に彼の手を握り返してそう言えば、今度は彼が驚いたように私を見る。
その瞳が愛しくて。
あぁ、やっぱり彼が好きだななんて。
「不束者ですが……返品不可でお願いします」
そう言えば、彼も緊張が解けたのか、ふと肩の力を抜いて笑った。
「ははっ、こちらこそ。できればキャンセルは無しで、お願いします」
「もちろん。……ねぇきんとき」
「うん?」
きっと喧嘩もするだろう。
またすれ違うかも知れない。
でも、一度離れていたからわかることがある。
「愛してる」
そう言えば、彼は泣きそうな顔して笑った。
「俺も……愛してる」
end.
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番外編もう少し続きます。
次回はメンバーに報告編。
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しらたま。(プロフ) - 成瀬 紬さん» コメありがとうございます!曲に気づいて頂けたならとても嬉しいです!! この曲の雰囲気を少しでも感じていただけたなら幸いです。また同じアーティストさんで違う曲のお話も考えているので、ぜひ今後もよろしくお願いします! (1月4日 9時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 紬(プロフ) - コメント失礼します!やっぱりあの楽曲からきてたか〜!とあとがきを読んでにこにこしております。歌詞がすごくわかりやすく綺麗に噛み砕かれていて、また、オリジナルストーリーとの合わせ方にとても引き込まれました!素敵な作品をありがとうございます! (1月4日 3時) (レス) @page20 id: ef4b6a6fe1 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - コメありがとうございます!!感想頂きとても嬉しいです^^ 遠回しになり過ぎないように頑張ったので、そう言って頂けると非常に救われます。また桜はまさにその通りですw もう、彼しかいないだろうと笑 番外編もお待ち頂けると嬉しいです✨ (12月17日 21時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - あと、桜をモチーフ?にしているのが最近のりすばらを思い出せて最高でした! (12月17日 21時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - とても面白かったです!しらたま。さんの表現の仕方がとても上手でこのお話の世界観に引き込まれるようで最高でした!これからも頑張って下さい! (12月17日 20時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらたま。 | 作成日時:2023年12月14日 20時