みっつ。 ページ3
✼ 🟦 ✼
付き合い始めたのは高校2年生になる春の日のこと。
桜が満開に咲き誇る中で。
君は桜色にその頬を染めて、俺に好きだと叫んでくれた。
俺はそんな君よりも、きっと桜よりも、もっと赤く染まっていただろう。
なんとか俺も好きだ、と返せば、嬉しそうに笑ってくれて。
それから俺の中で君の笑顔は何にも代えがたいものになった。
なったはずだった。
✼ ✼ ✼
「別れて欲しいの……」
「え……?」
そう告げられたのも、桜が咲く頃だった。
その年は例年よりも大分早く咲いていて。
俺の首には大学1年のクリスマスにAからもらったマフラーが巻かれていたのを覚えている。
俺も彼女もアルコールは飲まないから。
夜のデートでも入るお店は大体レストランかカフェ。
この時は2人のお気に入りのコーヒーが美味しいお店だった。
半分も飲んでいないコーヒーのカップをぎゅっと握りしめる。
その暖かさが逆に心を凍りつかせた。
対してAのカップはほとんど口をつけられていなかった。
待ち合わせの時から難しい顔をしていたのには気づいていて。
嫌な予感を振り払って、馬鹿みたいに関係のない話を持ちかけていた。
思えば、嫌な予感を感じていた時点で、俺も薄々分かっていたのだ。
この頃は実況も軌道に乗り始めていて。
有名な人に声をかけて頂いたり、イベントを開催したり。
時には失敗して、時にはメンバーと揉めたりもして。
それでも何とかこれをやって行こう、とやる気に満ちていた時だった。
「きんときのこと、ずっと応援してる」
「A、俺は、」
「私のことも応援してくれると嬉しい」
そういって静かに微笑んだAに、初めて出会った時のことを思い出した。
告白してくれたときのことを思い出した。
卒業しても、大学に入っても、ずっと仲良くしていこうと話したことを思い出した。
あぁ……君はいつの間にかそんな大人びた笑い方をするようになっていたんだ。
窓のガラスの外側に、雨によって桜の花びらが張り付いている。
すっかり冷めたコーヒーはもうその中身を減らすことはない。
波々と注がれたままのカップの手前には、返された合鍵が鈍く光っていたけれど。
それに並んで置かれたペアリングは、滲んだ視界にはよく見えなかった___
✼ ✼ ✼
177人がお気に入り
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらたま。(プロフ) - 成瀬 紬さん» コメありがとうございます!曲に気づいて頂けたならとても嬉しいです!! この曲の雰囲気を少しでも感じていただけたなら幸いです。また同じアーティストさんで違う曲のお話も考えているので、ぜひ今後もよろしくお願いします! (1月4日 9時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 紬(プロフ) - コメント失礼します!やっぱりあの楽曲からきてたか〜!とあとがきを読んでにこにこしております。歌詞がすごくわかりやすく綺麗に噛み砕かれていて、また、オリジナルストーリーとの合わせ方にとても引き込まれました!素敵な作品をありがとうございます! (1月4日 3時) (レス) @page20 id: ef4b6a6fe1 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - コメありがとうございます!!感想頂きとても嬉しいです^^ 遠回しになり過ぎないように頑張ったので、そう言って頂けると非常に救われます。また桜はまさにその通りですw もう、彼しかいないだろうと笑 番外編もお待ち頂けると嬉しいです✨ (12月17日 21時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - あと、桜をモチーフ?にしているのが最近のりすばらを思い出せて最高でした! (12月17日 21時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - とても面白かったです!しらたま。さんの表現の仕方がとても上手でこのお話の世界観に引き込まれるようで最高でした!これからも頑張って下さい! (12月17日 20時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しらたま。 | 作成日時:2023年12月14日 20時