ここのつ。 ページ15
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その記憶よりも大人になった、今の君と目が合う。
あの時の泣きそうな、触れたら消えてしまいそうな顔ではなくて。
泣きそうなのは変わらないのに、今はとても強い目をしている。
「ずっと、心に残ってた。きんときからしたら今更こんな話しをされても困るだろうし、私の自己満足なだけだけど。もし会ってくれるなら……許されるなら言いたいことがあった」
「A……」
「あの時はごめんなさい。子供で、自分のことばっかりで、きんときのことを思いやれなかった……」
泣きそうなのをぎゅっと堪えている。
その表情に俺まで泣きそうになってきた。
そんな、そんなこと、
「違う……違うよA……」
首をふれば、視界がぼやける。
こぼれ落ちないように上を向いて、呼吸を整えた。
そしてもう一度意気込んで彼女と目を合わせる。
「それを言うなら、謝るのは俺の方だ。あの頃は忙しさにかまけて、全然Aのことを思ってやれなかった。分かってくれる、許してくれるって甘えてたんだ」
懐かしい、充実していた日々。
それが全て輝いて見えるのは、彼女が頑張って忙しい俺に寄り添ってくれていたからだ。
「後悔していた……でもあの時俺は、君を引き止める言葉を何一つ持っていなかった……ただ謝っても君の心に響かないと気づいちゃったから……」
ずっと、ずっと。
なんであの時ああしなかったのだろう。
どうしてあの頃はこうしなかったのだろう。
「大事に……大切にするって約束を守れなかったこと……本当にごめん……」
堪えていた涙が頬を滑り落ちる。
胸が苦しくてしんどい。
でも、それと同時に長年の苦しみの正体がようやくわかった気がした。
俺はずっと、彼女のことを、
Aのことを大切にできなかったことを後悔していたのだ。
「それこそ違うよ、きんとき」
その優しい声に顔を上げる。
滲んだ視界に彼女の頬にも涙が転がり落ちていくのが見えた。
「私はずっと大事にしてもらっていた。あの時だって、別れる時だって私を思ってくれていたでしょう?でも……それを振り切ったのは私だから」
彼女はそこまで話すと一度口元をきゅっと引き締めた。
そして目が合うと、泣いたまま少し微笑んだ。
その表情は泣いているというのにとても綺麗だった。
「ありがとう、きんとき」
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しらたま。(プロフ) - 成瀬 紬さん» コメありがとうございます!曲に気づいて頂けたならとても嬉しいです!! この曲の雰囲気を少しでも感じていただけたなら幸いです。また同じアーティストさんで違う曲のお話も考えているので、ぜひ今後もよろしくお願いします! (1月4日 9時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 紬(プロフ) - コメント失礼します!やっぱりあの楽曲からきてたか〜!とあとがきを読んでにこにこしております。歌詞がすごくわかりやすく綺麗に噛み砕かれていて、また、オリジナルストーリーとの合わせ方にとても引き込まれました!素敵な作品をありがとうございます! (1月4日 3時) (レス) @page20 id: ef4b6a6fe1 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - コメありがとうございます!!感想頂きとても嬉しいです^^ 遠回しになり過ぎないように頑張ったので、そう言って頂けると非常に救われます。また桜はまさにその通りですw もう、彼しかいないだろうと笑 番外編もお待ち頂けると嬉しいです✨ (12月17日 21時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - あと、桜をモチーフ?にしているのが最近のりすばらを思い出せて最高でした! (12月17日 21時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - とても面白かったです!しらたま。さんの表現の仕方がとても上手でこのお話の世界観に引き込まれるようで最高でした!これからも頑張って下さい! (12月17日 20時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらたま。 | 作成日時:2023年12月14日 20時