やっつ。 ページ14
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そこには記憶よりも大人っぽくなった彼女がいた。
こちらを見る彼女はうんと綺麗になっている。
誰かが君をそうさせたのだろうか。
ちくりとする心に知らぬふりをしていると、彼女は少し微笑んだ。
「久しぶりだね。……忙しいだろうに急にごめん」
懐かしい声。
あの頃よりも落ち着いた静かな喋り方に、なんだか居心地の悪さを感じる。
もう、俺の知る君ではないのだと、言われている気がした。
「いや、今日は暇してたから。……元気だった?」
「うん……きんときは?」
「まぁぼちぼち」
名前を呼ばれて泣きそうになる。
それと同時に気づく。
化粧しているが彼女の目元も少し赤い。
やっぱりさっきの電話の時は泣いていたのだろう。
「きんとき、ここまで遠くなかった?まだ実家にいるの?」
「いや、実家は出たけど、近くには住んでるから。Aは?」
「私も実家は出て、隣駅に引っ越したの」
「そっか……」
そこで会話が途切れる。
彼女は少し視線を彷徨わせる。
何から話そうか迷っているのだろうか。
恐らく、ただ近況を聞くために会おうと言ったのではない筈だ。
さらりと落ちてきた髪を耳にかける仕草は見覚えのあるものだった。
その左手の指先にアクセサリーがついていないことにほっとする。
俺は彼女に会ってからずっと、俺の知っている所と知らない所を探している。
それにいちいち、一喜一憂して。
自分のことながらこの落ち着きの無さに思春期の学生か、とため息が出そうだ。
それでも目の前の彼女に感じる、このぐるぐるとした感情はとどまることを知らない。
しばらくの沈黙の後、彼女がもう一度口を開いた。
「今日、電話したのは……あの時のこと、ちゃんと話さなきゃって」
「……あの時のこと?」
心当たりが無くて首を少しかしげれば、彼女は少し視線を下に落とした。
「……数年前、別れた時」
「……」
「あの時私はきんときの話しを聞くこともなく、一方的に終わらせちゃったから……きっと、きんときにだって言い分はあっただろうに。それに、私も理由も何も話さなかった。なのに、私の希望だけ聞いてくれて……」
必死に言葉を繋げる彼女を見ていて。
ふと、あの時のことが思い浮かぶ。
2人とも何となく察して。
傷つくのを、傷つけるのを恐れて。
お互いに話さなかった。
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しらたま。(プロフ) - 成瀬 紬さん» コメありがとうございます!曲に気づいて頂けたならとても嬉しいです!! この曲の雰囲気を少しでも感じていただけたなら幸いです。また同じアーティストさんで違う曲のお話も考えているので、ぜひ今後もよろしくお願いします! (1月4日 9時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 紬(プロフ) - コメント失礼します!やっぱりあの楽曲からきてたか〜!とあとがきを読んでにこにこしております。歌詞がすごくわかりやすく綺麗に噛み砕かれていて、また、オリジナルストーリーとの合わせ方にとても引き込まれました!素敵な作品をありがとうございます! (1月4日 3時) (レス) @page20 id: ef4b6a6fe1 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま。(プロフ) - コメありがとうございます!!感想頂きとても嬉しいです^^ 遠回しになり過ぎないように頑張ったので、そう言って頂けると非常に救われます。また桜はまさにその通りですw もう、彼しかいないだろうと笑 番外編もお待ち頂けると嬉しいです✨ (12月17日 21時) (レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - あと、桜をモチーフ?にしているのが最近のりすばらを思い出せて最高でした! (12月17日 21時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
sigure(プロフ) - とても面白かったです!しらたま。さんの表現の仕方がとても上手でこのお話の世界観に引き込まれるようで最高でした!これからも頑張って下さい! (12月17日 20時) (レス) @page22 id: 3f19d5a1d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらたま。 | 作成日時:2023年12月14日 20時