▽ ページ32
◆ A視点
✼ ✼ ✼
私にとって師匠であるスマイルは世界の全てだった。
彼に拾われる前、どうしていたかは今でも思い出せない。
命を助けてもらって、名を貰って、育てられた。
それが全てだ。
それが家族愛でないことは、最初から気づいていた。
でも偉大なる魔術師に名を連ねる彼の隣に立つのは、同じように偉大なる魔術師でなければならない。
そう思って、彼を師匠と呼び、頑張って勉学に励んできたというのに。
世界は残酷だ。
私には師匠は愚か、世間一般の魔術師より到底少ない魔力しか無くて。
それでも唯一認められたのが新たな魔術式を編み出すことだった。
私はふと思いついた。
きっと私は彼の人生からしたら、本当に僅かな、それこそ点のような瞬間しか一緒にいられないけれど。
けれど、私の編み出した魔術式が優れていれば、きっと今残っている魔術式の数々のように数千年後も彼の側に寄り添えるのではないだろうか。
だから私は頑張って、数々の魔術式を寝る暇も惜しんで考えてきた。
ひとつでも、例え一個だけでも、彼の側にずっとあり続けられる術ができれば、と。
だけど……
「嫁に行けってのは話が違うと思うの！！！！」
ばんっと思いっきり目の前のローテーブルを叩けば、ソファの隣に座って話しを聞いていたぶるーくさんが引きつった顔をした。
「まだ行けとは言われてないでしょ」
「似たようなものだよ！！」
私は目の前のグラスをぐびーっと飲み干した。
アルコールの匂いにくらくらするが、このいら立ちは全然収まらない。
むしろ昨夜の話しを思いだすと、余計にむかむかとしてくる。
ぶるーくさんがぽつりとため息を吐いた。
「まさか、こんなに絡み酒タイプだったなんて……」
「ぶるーくさんもう一杯もらっていい？」
「あぁ、はいはい。どうぞ、君のために開けたやつだからね」
「ありがとう」
朝から何やってんだ、と突っ込む人はここにはいない。
ぶるーくさんのお屋敷に突撃してから、時刻は昼を回ろうとしていた。
朝から根気強く私の話しを聞いてくれている彼には悪いとは思うが、どうしてもどこかに吐き出したくて仕方なかった。
それに彼は幼い頃からの付き合いがあり、親戚のお兄さん感覚で。
まぁ、結局は彼に話すか、もう少し離れている別のお兄さんたちのところに行くしか私には選択肢がないのだが。
「それにしても……なんで、ぶるーくさんもあんなこと言ったの？」
✼ ✼ ✼
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらたま。(プロフ) - るあさん» るあさん！返信が遅くなってしまい申し訳有りません！何かしらで通知を見逃してしまっていたようです(汗) コメ頂きありがとうございます！ntjさん少し特殊なお話でしたが受け入れて頂けてとても嬉しいです＾＾ 残り数日、お付き合いくだされば幸いです✨️ (4月25日 2時) (
レス) id: 5d28ad3807 (このIDを非表示/違反報告)
るあ(プロフ) - 拾われた子とその恩人の話好きなので嬉しい、！特に'それはきっと素敵なこと'が好き！善意から距離取ろうとする主人公と接し方が分からないinrさん可愛すぎました、私もあのご夫婦大好きなのでメインなのも嬉しかったですれ！！ (4月17日 17時) (レス) id: cdc395c024 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
