【wrwrd!】いろは唄戀【短編集】 (ページ10)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:8,503 hit

やは肌のあつき血汐にふれも見で/em ページ10

沢山の資料や本が幾つも山を作り、所々にアンティークな雑貨が飾られている教授の部屋。
その真ん中に据えられたマホガニーの重厚な机の上で、部屋の主は何やら頭を抱えている。

｢次の講義、ディスカッションの進行はこんな感じで...それが終わったら論文のチェックも...時間が足りない...！｣
｢教授、休憩した方が良いんじゃないですか？｣

あーうー言いながら原稿用紙に物凄いスピードで講義のプロットを書き上げていく教授の机に、私はそっと湯気の立つコーヒーカップを置いてため息を吐いた。

今日こそは、教授に手を出して欲しくて勝負下着まで着てきたのに。
流石に働く社会人の仕事の邪魔を積極的にするわけには行かなくて、私はさっき使ったコーヒーメーカー周りの整頓を始めた。

この大学で政治学の教鞭を執っているエーミール教授と、大学の生徒である私は付き合っている。
私の一目惚れによる猛プッシュに教授が折れてくれた...半分くらいは。
但し、｢私が成人し、大学を卒業するまで手は一切出さない｣っていう条件付きで、だ。
キスは愚か、抱き着いたり手を繋いだりするのも無し。まさしく苦行である。

...なので、物は試しに教授のコーヒーにスコッチウィスキーを入れてやった。以前教授が友人から貰った、と言っていたウィスキーの瓶ともうひとつの小瓶を小さく揺らす。
既に開封済みで少し中身が減っていたし、バレることはないだろう。万が一気付かれても、｢美味しいって聞いた｣で誤魔化すつもりだ。私がお酒を飲んで襲ったり出来ない分、教授に飲ませれば良いのよ。我ながら名案過ぎる。

以前から教授がお酒に強くないことは知っていた。一緒に呑みに行ったことは無いからどれほどの弱さなのかは分からないけど、抱き着いたりあわよくばキスも出来るかもしれない。
一度手を出させてしまえばこちらの勝ち。自分自身で立てた誓いを破る事になる教授には悪いけど、目の前に出されたスイーツをいつまでも我慢できる程私はイイコじゃない。