月夜良し夜良しと人に告げやらば/os ページ13
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金曜日の夜。俗に言う花金という奴だ。
雪がちらつく中、凍えながら電車をホームで待つ。
巷を騒がせてたプレミアムなんちゃらってイベントとはまだまだ無縁の私は、ラッシュを過ぎて酔っ払いが目につく電車に乗り込んだ。
空気の抜けるような音と共に、冷たい外気と暖房の効いた車内の空気が区切られる。
私は深く息をついて席に腰を下ろし、ぼうっと向かい側の窓から見える夜景に目を凝らした。会社のビルだけでなく、居酒屋のネオンが主張する景色が目に眩しい。
連絡がひとつも来ないこのスマホの画面とは正反対だ。
「ついこの間までうるさいくらい来てたのに...」
かれこれ1ヶ月くらいろくなやり取りがされていないトーク履歴を恨めしげに睨んだ。
トーク履歴の一番下は、3週間前の「じゃあまた呑みに行きましょう」で終わっている。
なぁにが「また呑みに行きましょう」よ。もう1ヶ月くらい経つんですけど。
合コンの時に「こまめに連絡取りましょう」って言ってくれたのはどうなってるのよ。そもそも自分から連絡出来ない自分が1番悪いのだけれど!
「…やっぱり、"頭数合わせ"は駄目なのかしらね」
はぁ、と雪を透かして闇に消える吐息を目で追う。
だって、仕方が無いのだ。年甲斐もなく一目惚れとやらをしてしまったのだから。
歳上女のこんな眉を顰めたくなるようなジレンマなんて、貴方は全く知らずに可愛い女子社員と話してるんでしょう?
私だって"絡め取りたい"なんて思うつもりはこれっぽっちも無かった、なんて独り言い訳してみる。
ただ、貴方と生温い関係を続けて行ければ、それで。
それだけで良かった。
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作者名:鳳仙夏 | 作成日時:2018年1月24日 16時