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にっこりと笑って首を傾げた私の言葉に、一瞬珍しくきょとんとした表情の彼だったが、その桜色はどんどん濃くなっていた。表情も熱っぽさと妖艶さを湛えたものに変わってゆく。
「なに、入れたんですか...っ」
「そこのスコッチウィスキーと、ちょっとしたものを。だって教授、本当に一切手を出してくれないんですもん」
傍らにあったウィスキーの瓶をふるふると揺らして見せると、教授は眉間に皺を寄せて顔を顰めた。今の状態でそんな顔されても、怒りより悩ましさを前面に押し出した表情にしか見えないのに。
「未成年に君に手を出したとあらば、君のご両親に申し訳が立ちません...私は自分自身で誓ったんです、っ」
「_焦れったいですね」
とうとう熱そうな吐息を隠し切れなくなった癖に、まだ揺らぎそうにない教授に苛立ちを抱いて、私は彼の前につかつかと歩み寄る。
「な、何ですかAさん、っむぐ?!」
「ん、む」
きっちりアイロンが掛けられ、糊の効いたシャツの胸元を緩く掴んで自分の唇と彼のそれを無理やり合わせた。
ちろり、と教授の固く閉ざされた唇を舌でなぞって離す。ぷは、なんて奇しくもカップを口から離した時と同じ吐息を漏らして、教授は肩を上下させた。
「_ね、教授。これでもまだ、手を出さないでいられるんですか?」
くすりと笑って口角を吊り上げ、自分のブラウスの襟に指を引っ掛けて鎖骨を見せ付ける。その瞬間、教授のミルクティの瞳に欲の炎がちらついたのが分かった。
「...覚悟は、出来ているんでしょうね?」
作戦は大成功。彼からの深い口付けの快感に浸りながら、私は彼に手を伸ばした。
(それにしても、薬は反則ですよ...あ、煙草大丈夫ですか?)
(ふふ、駄目なんて言うわけないじゃないですか。それと、私が入れたのは、ただの栄養剤です。ほら、これ)
(...え?)
(私はウィスキーに酔っただけだと思ったんですけど...どうしたんですか、教授?)
(っ...全く、君って娘は!もう寝ます!)
(えー、もっとお喋りしましょうよー)
やは肌のあつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君
(私の熱い柔肌に触ってもみないで、道徳的なことばっかり言って。教授は寂しくないんですか?)
月夜良し夜良しと人に告げやらば/os→←さびしからずや道を説く君
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作者名:鳳仙夏 | 作成日時:2018年1月24日 16時