65*お稲荷さん ページ18
翌朝は暇なお兄ちゃんと一緒に全国大会の開会式を応援席から見つめていた。
｢白鳥沢の１番めっちゃ強そう｣
｢牛島さんはね18歳以下の日本代表にも選ばれてるんだって。おじいちゃんのイチオシ選手。｣
｢へぇ。
Aの彼氏の元ヤン君もいた。本当にアイツでいいの？｣
｢いいの！
お兄ちゃんが徹先輩推しなのは分かるけど、バレー理由にフラレたし。
…傷心の時に気遣ってくれたのは賢二郎なの。｣
同じ中学だから徹先輩と関わりのあるお兄ちゃんは別に興味無いと言わんばかりにコート眺めるから腹立つ。
…色々食べ物買ってくれるから大好きだけど。
賢二郎も堂々としててかっこいい。
携帯のカメラじゃちゃんと撮れないのが悔やまれる。
お昼前に白鳥沢の一回戦があり、これからはウォーミングアップの為移動して他の体育館に行くらしい。
私はおじいちゃんが注目していると言っていた学校の試合を眺めたり買食いして過ごそう。
｢賢二郎に声掛けれるかもだからちょっと行ってくる。迷子になったら連絡するからここに居てね！｣
お兄ちゃんに大きめの荷物を預け、早歩きで賢二郎のもとを目指す。
階段を下りようとしていると少し先に白と紫の集団を見つけた。
｢賢じ…わわっ…！
……落ちてない…｣
踏み外した階段と、引っ張られ引き寄せられた腕に焦りで心臓が痛い。
｢ご、ごめんなさい…、ありがとうございました…｣
｢おん、大丈夫？
目の前で落ちるからびっくりしたわ。
…あれ？昨日の…｣
｢…おにぎりの人。｣
｢おにぎりの人ってなんやの。
ちょっと手すり捕まってて…｣
離された腕と言われた通り手すりに捕まっていると、コケた拍子に脱げてしまったローファーを履かせてくれる。
｢階段で靴落とすとかシンデレラやん。
どこもケガしてない？｣
｢大丈夫、です。
ありがとうございました。｣
ハッと振り返るも白と紫の集団の姿はもう無い…
賢二郎と少しだけ話したかったなぁ…。
｢…なぁ。お姉ちゃん名前なんて言うの？｣
｢鷲匠Aです。｣
｢Aちゃんって可愛い名前やなぁ。
俺は宮治。｣
｢宮さんってお稲荷さんの双子の？
注目の選手だと監督してる祖父に聞いてました。｣
可笑しそうに笑う。
宮さんはおっとりとした雰囲気のせいか、大きな体格のせいか太一と話してる感覚。
…そしてイケメン。双子だから同じ顔がもう一人って遺伝子すごい。
｢お稲荷さんって…おもろい子やなぁ、Aちゃんは。」
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作者名：モカ
| 作成日時：2020年4月10日 21時
