63*彼氏が愛おし過ぎる件。 ページ16
遠征に慣れているからなのか、皆さんがテキパキとしていて新幹線に乗るや持参のアイマスクをして眠る人達までいる。
全国大会に向かう為の新幹線の中におります。
生徒の仕切りを斎藤先生が行う中、私は迷子にならない様にと賢二郎と太一の間に座らせられています。
｢A迷子になるなよ。
着くまでは賢二郎と太一から離れない様にしろ。｣
これを言われる高校2年生はおじいちゃんにとっては可愛い孫なんだ…と頭で理解しているも、隣の太一が笑うから腹立つー。
賢二郎さんに至っては｢俺から離れるなよ｣と引率前提の話し方…
…賢二郎が隣にいるなら安心だけど。
｢賢二郎も寝るの？
太一さんなんてもう寝てらっしゃるよ。｣
バレー部と一緒だから制服を着ての同行。
賢二郎達はバレー部揃いのジャージを着用している。
午前中は軽く練習をして、午後の新幹線に乗っている彼等。
体力底無しなのかな…と少し引く。
｢…お前は寝れるの？｣
｢うーん…寝れるかわからないけど音楽聞いて静かにしてるよ。｣
｢耳栓片方貸して。あと手も貸せ。｣
｢金貸せみたいな言い方…｣
カツアゲに遭ったのでイヤフォンの片方を賢二郎に貸して、見せられた手のひらに自分の手を乗せる。
イヤフォンの短さのせいで頭を賢二郎の方に傾けなきゃいけない。
｢音大きすぎない？｣
｢このままで良いよ。
何笑ってんの？｣
｢賢二郎近くて嬉し。｣
｢…ん。｣
握られた手をニギニギして力を入れたり緩めたり。
周りには人も居て、眠る人も居るから更に静かにしなきゃいけなくて。
この状況が何だかドキドキしちゃう。
触れたままの手のひらを指で撫でられ、弱い力で爪を立てられるからゾワソワとする。
見上げれば意地悪な顔がこちらを向いていて、キスしたい…って思っちゃうのは自分が欲求不満みたいで…
動く手をぎゅっと握ると、喉を鳴らして笑っている。
携帯を片手で操作し画面を見せると｢だめ｣の一言。
[キスしたい]って素直に見せたのに…
寝てるとは言え太一が隣にいて後ろにも前にも部員が居たら賢二郎はしないよね、って分かってるから諦めた。
諦めたのに持ち上げられた手の甲にキスするんだよ…！
｢〜っ！｣
｢これで満足？｣
｢妊娠しそう…｣
｢ばーか。｣
こてんと賢ちゃんの肩に頭を乗せると、賢ちゃんも頭をこちらに傾けてくる。
…今すごく写真とりたい。
気が抜けて結局新幹線が到着するまで寝ちゃいました。
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作者名：モカ
| 作成日時：2020年4月10日 21時
