62*生温さなんて今は要らない ページ15
｢…瀬見さんか太一に何か言われたの？｣
｢…ん。
お前の気持ち察してやれる程器用じゃねぇし、ぶっちゃけ言われなきゃわかんねぇ。｣
｢うん。知ってる。｣
｢…甘えたいなら瀬見さんじゃなく俺にしろ。
ここ数日イライラしてお前に当たってた。
ちゃんと一緒に行けるのも泊まれるのもすげぇ嬉しい、から。｣
賢ちゃんが不器用で素直じゃなくてツンデレのツンが凄いことはちゃんと分かってる。
分かってるつもりでも、たまたま今日は優しくしてほしい日だった。
未だにうるさい胸の音に頬を擦り寄せて、ぎゅっと身体を押し付ければ背中に回る腕の力が少し強くなる。
｢賢ちゃんがね、他の女の子に対する接し方と私に対する接し方が違うのは凄く嬉しい。
それでももう少し優しくしてほしいって今日は思っちゃって…
…私もね、少し気分が下がってて…その、女の子の日…で、気持ちが不安定だったのかも。｣
言うか凄く迷った。
きっと男の子には分からない悩みだから。
…そんなんで気分下がる意味が分からない、なんて賢ちゃんは言わないだろうけど…
少し顔を赤くしている賢ちゃんに申し訳なくなった…
｢その、ごめんね、こんな話になっちゃて…｣
｢俺こそ本当にごめん。
女性にとっては大切な事だろ…｣
｢…勉強してくる？｣
｢してくる。
母親になる為にも必要な事だから…｣
そんな真剣に考えないでください…！
不器用で素直じゃないけど勉強熱心だから、私の為にと調べてくるのだろう。
恥ずかしいけど、知ってもらう事も大切な事かもしれない。
｢いつか私のこと、お母さんにしてくれる？｣
｢…いつかな。」
｢ふふ、来てくれてありがと。
一人だったらモヤモヤ考えて徹先輩とお菓子食べ散らかしてたかもしれない。｣
｢…本っ当に来てよかった。
及川みたいな完璧な彼氏にはなれねぇけど、お前の事だけは誰よりも大切にしたいって思ってるから。｣
…胸が苦しい。
キュンキュンし過ぎた。
こんな事言ってもらえるなんて思いもしなかったから、本当にツンデレ恐ろしい。
｢…なぁ、俺って怖いのか？｣
…この人何言ってんの？
確かに賢ちゃん以上に怖い人って中々居ない。圧が強い。
｢美少年なのに雰囲気と圧が怖い。｣
｢へぇ。｣
｢それ！その目で語ろうとするとこ！
気にしてるの？！
私は怖いけど好きだよ。
今更生温い賢ちゃんとか、逆に気持ち悪いよ？｣
｢俺もお前の素直過ぎる所、好ましく思っている｣
｢こわっ…｣
ほら、この圧…！
63*彼氏が愛おし過ぎる件。→←61*無条件な甘さと必死な姿
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作者名：モカ
| 作成日時：2020年4月10日 21時
