ツンデレ王子と白鷲のお姫サマ②[白布賢二郎] (ページ13)

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60*無自覚の鈍痛ページ13

白布賢二郎side

見上げた顔が苦しそうだった__

俺の事を待っていたのだと思っていたがAは一人で帰って行く。

｢はぁ？…おい、A！｣

体育館を出るも既に姿は無い。
後ろから太一や瀬見さんも見ていてため息を吐かれている。

意味がわからず瀬見さんを見れば｢もう少しAには優しくしてやれよ…女の子だぞ。｣と呆れられていた。

優しくって…いつも通りだと思う。

｢甘やかしてくれって俺のとこに来た。
白布の性格も分かるし、Aも分かってるだろうけど。｣

｢…瀬見さんに言われたくないです。
ないですけど、アドバイスとして受け取っておきます。｣

｢本当かぁいくねぇな。｣

体育館に残る先輩達に挨拶をし、送る為に急いだ。
何故か太一も一緒で、コイツはもう自主練習をやめたかったのだろう。

｢俺、Aに冷てえのかな？｣

｢自覚ないの？
彼女にデコピンはしちゃダメだし、大会一緒に行けるの賢二郎は嬉しくねぇの？｣

｢は？嬉しいに決まってんだろ。｣

｢デスヨネー。多分Aには伝わってなかったんじゃね？表情暗かったじゃん。｣

｢…お前の方がAの事わかるんだな…｣

｢俺の方が賢二郎より先にマブダチになってるんで。｣

悔しいが言い返せない。
見てるだけだった俺と違って太一は入学してすぐにAと仲良くなっていた。

Aも太一にはなんでも話すらしいし、気心が知れているのかもしれない。

…冷たくしたい訳ではない。
デコピンはもうしねぇ。

俺の性格が素直じゃない事と、照れて言えない事が要因で、Aなら分かってくれると勝手に思い込んでいた。

太一と別れて昇降口方面を探すも見付からず、こちらに戻ってくる太一は飴玉を俺に差し出す。
あいつの好きな蜂蜜りんご味の飴…

｢一人で帰れるって。追うか迷ったけど、ガチで走ったAには勝てない。
あれでも陸上部。｣

｢…わりぃ。｣

｢追う？｣

追うって言い出て来たものの、バス停にAの姿は無く時刻表的にももう行ったあと。

何やってんだよ…とその場にしゃがみ込み盛大に溜息を吐いた。

Aの優しさに甘えていた自覚はある。
あいつは何も言わないから、不満が溜まっていたのかもしれない。

思い返してもここ数日、笑った顔を見ていない。

数分して来たバスに乗り、北川駅前に着くと
知らない男…いやあれは及川だ。
及川と歩く後ろ姿を目にした。

…及川なら、恥ずかしげも無くAを甘やかすんだろうな。