59*グッピーも逃走しちゃう ページ12
｢言わなかったっけ…？
太一知ってたよね？｣
｢しらぶのらぶは愛情のラブ？｣
｢それじゃない！もう！なんで聞いてるのよ！
…あ、賢ちゃんは風邪引いてたから話すタイミング逃しちゃったんだ。｣
同行の旨を説明すると｢ふーん｣と素っ気の無いお返事が貰え…
一緒に行けて嬉しいのは私だけなのかもしれない。
少し心が沈んで行くのを感じ、悟られたくないから立ち上がり練習の邪魔をしてもいけないから｢帰るね｣と告げて体育館を後にした。
私は応援と言う名目で遊びに行くけど、賢ちゃんはバレーの為に行く。
全国大会だ、みんな真剣なんだ。
邪魔しちゃいけない。
…分かっていても今日は思考がネガティブだ。
はぁと溜息を吐き、さっさと家に帰る事にした。
言葉にされる事は少ないけど、大事にされているし…
大事にされているのだろうけど、賢二郎の気持ちを100%理解なんてきっと出来てはいない。
｢好きって言って欲しいなぁ…｣
不安なんて無い、大丈夫。大丈夫…
ちゃんと好かれてるの。
賢二郎はツンデレさんだから言葉も態度もキツイけど、大丈夫なの。
…瀬見さんと話したら少しだけ、前の事思い出しちゃって徹先輩ならこういう時｢好き｣っていっぱい言ってくれて抱きしめてくれていた。
優しくて甘い人だったなぁ…
｢お、Aみっけ。｣
聞こえた声は太一で何故か私を探しに追い掛けて来たらしい。
賢二郎も今探しているとか。
｢なに？｣
｢急に帰ったから。｣
｢大会前だし忙しいでしょ。｣
｢賢二郎送りたかったって機嫌悪くなってたけど。｣
｢…暑いし疲れてるから今日はいい。
そもそも一人で帰れるし。｣
自分の冷たい口調にハッとした。
太一はきっと賢二郎に言われて部活で疲れてるし、暑いのに探しに来てくれたのに…
｢ごめん、言い方トゲあったよね…｣
｢A泣きそう？
抱きしめてあげようか？｣
｢…ふふ。
太一と付き合ったら毎日楽しいだろうね。｣
｢…なら、俺と付き合う？｣
見上げた顔がいつもの真顔だから冗談なんだろうけど、太一にそんなこと言われるとは想像もしなかったから驚いて固まってしまった。
｢…付き合わない。
探しに来てくれてありがとね。
…ちゃんと家に帰るから大丈夫だよ。｣
｢賢二郎呼ぶ？今探してるから連絡すればすぐ来るよ。｣
｢ちょっとね、今日はメンタルへたってて、今キツイこと言われるとしんどいから会いたくない。｣
太一の手に飴玉を握らせて、足早に学園をあとにした。
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作者名：モカ
| 作成日時：2020年4月10日 21時
