58*グッピーなら死んじゃう ページ11
｢せーみーさん！甘やかして下さい｣
｢お、いいぞ！どうかしたのか？｣
1週間後には全国大会。
最近の賢二郎は暑さで不機嫌な為、少々八つ当たりをしてくる。それでも会いたくて部活後、一緒に帰る為に自主練習中の体育館に来てしまってる。
｢全国大会緊張しますか？｣
｢初戦は緊張すっかなぁ。
若利がいて、頼れる仲間も居て俺のチーム強いよな、こいつら味方だって思えば緊張は無くなるけどな。｣
瀬見さんのニカッて笑う顔が好き。
優しいのに力強くて裏表無い。
…賢二郎も太一もこんな風に笑えるかな？
コートではトスを上げたりブロックしたりと二人とも汗を垂らして頑張ってる。
｢白布と付き合ってんだよな？
喧嘩とかしねぇ？あいつ無愛想なとこあるから少し心配。｣
｢喧嘩はしたこと無いですね。
しても口で勝てる気しない…｣
｢…確かに。
なんつーか白布が恋愛してるのが想像付かなくてさ。｣
｢白布のらぶは愛情のラブです。
口悪いけど、部活のあとバス停まで送ってくれたり、連絡も事務連絡っぽいけどマメで良い彼氏です｣
ははっと笑う瀬見さんとコートを眺めた。
瀬見さんは正セッターだった。
それが賢ちゃんになり、普通なら嫌な感情を向けると思うのにこの人からそう言うのは感じられない。
｢それ聞いて安心した。
及川にはぞっこんで宝物みたいに愛されてたから白布との温度差凄そうで心配してたんだ｣
｢宝物ですか…？確かに温度差も性格も真逆だから違いしかないけど｣
頭にぽんと乗った手が優しく左右に揺れた。
瀬見さんは少し徹先輩と似てる…
人の機微に聡く、心許した人にはどこまでも優しい。
｢瀬見さん、セクハラです。｣
｢なっ、セクハラじゃねぇーし。本当かぁいくねぇな、白布は。｣
｢お前も容易く撫でられてんじゃねぇよ。｣
｢痛い…｣
私にも容赦なくデコピンしてくる所はちょっと嫌いです。
タオルで汗を拭いたあと、私と瀬見さんの間にわざわざ座るところは好きです。
｢新幹線何時でしたっけ？｣
前日のうちに現地入りするとおじいちゃんから聞かされていた。
試合も応援するし見たいけど現地の美味しい物も楽しみ。
｢午後イチの新幹線。｣
｢あっち着いたら、迎えがきてくれるから初日はお兄ちゃんの家泊まって、初戦の日は同じ宿で｢ちょっと待て。なんの話してんの？｣
｢え？大会の予定だけど？｣
｢聞いててねぇけど？｣
二人で顔を見合わせたけど、ブラックホールみたいな目が怖くて視線を反らした。
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作者名：モカ
| 作成日時：2020年4月10日 21時
