ツンデレ王子と白鷲のお姫サマ[白布賢二郎]

15*隠し事の消却 ページ15

白布賢二郎side


笑った顔はよく見ていた。

楽しそうにだったり、間抜けそうにだったり、
美味いもの食った時もよく笑っている。


怒った顔はあまり見ない。

太一に食いもん取られた時はぶーぶー言って殴ってたか？


コロコロと変わる表情は見ていて飽きないし、惹かれた理由のひとつ。



泣いた顔を見たのは[あの冬の日]と今。



泣かれたらどうしたらいいか分からなく、
俺のせいで泣いたって事実に胸が傷んだ。


他校に付き合っていた奴が居たのは知っていたし、特に相手も気にならなかった。
別れたって聞いた時もAの心配より｢やっと別れたか｣って内心喜んでいたくらいで、結局俺は自分の事しか考えていない。


傷心に付け入るように、弱みに付け込む様に慰めるフリして付き合った自覚がある。
だから元カレが来たって聞いた時は寄り戻すんだろうと漠然と考えていた。


しかも相手が[あの]及川だ。

牛島さんが白鳥沢に来るべきだと何度か言っているのを聞いたことがある。


Aが及川の元に戻っても文句は言えない。
俺には及川に勝る要素が無い。



｢…怒ってる？
先輩来たけど、会いたかったとか思った事も、やり直したいなんて思ってないよ…｣

｢…怒ってねぇよ。
お前が及川のとこに行っちまうんじゃねぇかって考えてた。｣

｢行かないよ｣

｢うん｣

｢…賢ちゃん泣いちゃう？｣

｢泣かねぇし。｣



笑う顔に安堵しつつ、目元の涙を拭ってやると抱きつかれる。
首に手を回して、何故か俺の後ろ髪に触るから好きな様にさせておく。

前から思っているけど、くっつくのが好きなのか…女ってこんなもんなのか？



｢賢ちゃん可愛い｣

｢はぁ？意味わかんね。
…お前のが可愛いから。｣


動きが止まったから顔を見れば赤い…
可愛いとはいつも思っているが口にする事はあまり無い。

…照れてる？


｢…不意打ち反則です！｣

｢お前俺にいつも言うだろ。｣

｢賢二郎、好き｣

｢…｣

｢言ってよ！｣



自分の性格は自分が一番良く分かってる。

…笑って受け入れてくれるから甘えている事も。

腰を引き寄せて、近くなった距離でデコに口付ければまた｢好き｣と擦り寄る。


｢付き合ってる事、もう隠さなくても良い。｣

｢…賢二郎はいいの？｣

｢今まで悪かったな。｣

｢じゃぁこれから手繋いで学校歩いてお弁当あーんもしあえるね！｣

｢…｣


自分の保身の為だった。
隠したままでいたら守れるものも守れねぇ。

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