変わりたいよ ページ5
それは、イトカンの外で。
チハルは、突然のことだったから。
もちろん驚いてはいたけれども。
何も言わず。
すぐに僕を抱きとめてくれた。
多くを語らない僕を…ううん。
何一つ、語らない僕を。
ただ受け止めてくれた。
あれだけ悩んで。
ようやく、"山王"になったというのに。
僕はまるで昔の僕のように、怖気付いて投げ出そうとしたんだ。
大切な人をほっぽり出して。
逃げ出そうとしたんだ。
あんな、あんなことを。
今まで言っておきながら。
いざとなったら尻尾を巻いて逃げようとした。
なんと、愚かなことだろう。
これじゃあ。
これじゃあ何の意味もないじゃないか。
震えは、止まらない。
だけど。
「ぼくは、僕は…役に立てるかな?」
喧嘩はとてつもなく弱いけど。
頭だっていいわけじゃない。
不器用で仕方なくて、呆れるくらいの人物で。
けれども。
そんな小さな音は、
確かにチハルには届いていたようで。
ただ頷いて、
未だに震える背中を。
優しく撫でてくれた。
「俺がそばにいるから。」
チハルは、静かにこぼした。
それがどれだけ嬉しかったことか。
どれだけ力になったことか。
君は、きっと。そこまで気づいてないかもしれないけど。
されど、そんな出来事が。
ただただ序章でしかなかったことを。
誰かは、影で笑っていたかもわからないけど。
…構わない。
足掻いてやろう。
僕は決意をしたんだ。
守ることを、"大切"を守ることを。
ちょっとでも力になるなら。
僕は駆け抜けることを、決めたから。
もう立ち止まって。
グズグズしてるのはやめよう。
"弱虫"とは、ここでおさらばしよう。
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作者名:シラハマ | 作成日時:2019年4月5日 5時