山王商店街を、守りたくて。 (ページ20)

今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:14,637 hit

参謀になれるかページ20

「どうやら、ずいぶんと嫌われている様ですね。」
さっきの僕の嫌みなんかそしらぬふりして、返す目の前の"紳士"は。
とてつもなく冷たい空気をまとう。

「そりゃもちろん、」
ファーストコンタクトが悪かったですから。
言外にそれを伝えながら、僕は彼をにらむ。
そんな視線を送り返す。

先の抗争で、チハルがちょっと世話になったとか。
別件で僕がキジーと仲がいいとか。
そういうのはおかまい無しで。
僕としては、彼…KOOとは話を続けたくないのだ。

「確かに先日は無礼を働いてしまいました、それは認めましょう。」
しかし、
「本日はあなた自身と話をしたくて、足を運ばさせていただきました。」

敬意なんか絶対込められてない、形式だけの"敬語"を使って。
彼は勝手に話を続ける。

「僕には何も、話す事なんてないんですけど。」
「山王の…ひいてはコブラのためになるかもしれない、と伝えても?」
「それがあなたの"作戦"かもしれませんし。」

総長の名前が出て、心が揺らがなかった訳ではない。
だけど、彼が本当に心の底から思っている事は分からない。
ならば相手の手に乗る必要性もない。

…自分で、調べれば良いのだから。
そうやって覚悟して、彼の出方を伺っていると。

KOOは一つ、ため息をついて。
「彼女の言う通り、でしたね。」
見かけにやられていると、かなわない。

「改めてまた一つ、無礼を働いた事。謝罪いたします。」
「…え?」
「あなたと同じように、私も自身のボスを救いたいのです。」
「だ、けど…あなたは右腕って…僕とだいぶ立場が違う…!」
「だからこそ、出来ない事もあるんですよ。"誰かと取引する"とか。」

その言葉が出た瞬間、本来なら午後からのシフトだった筈の。
僕の親友が。
KOOの事を殺すんじゃないか、って位の勢いで飛び出してきた。

「ダウトの事なら、そっちが勝手にやってれば良い。」
「やはりご存知でしたか。」
「Aをそっちの事情に巻き込んで、これ以上怪我なんかさせらんない!」
「先日の抗争も、本日の会合も。彼自身が選んでその行動をとられた筈ですが。」
「それでも!」
親友が"死ぬかもしれない"、そんな状況に。
「巻き込める訳、ない…!」

目の前で勝手に繰り広げられる喧嘩に。
僕は目を丸くするしかなかった。

「ダウトがどうこう、は、なんとなく。分かってたけど…、」
ねえ、ハヤト。
「死ぬかもしれない、って?」

親友は泣きそうな顔を浮かべて僕を見る。