"フェイク"の"フェイク" ページ16
リョータくんの言葉に、僕はぽかん、と。
情けなく口をひらいてしまった。
「雰囲気? 見立てる?」
「そう。」
頷きながら、僕とは全く正反対の。
とても真面目な顔で彼は続ける。
ごめんね、そう前置きをして。
「ハヤトのことだから、こうなるんだろうな。ってわかってたんだ。」
きっと、Aくんという"親友"のことを選ぶんだろう。って。
「リョータくん…、」
「もちろん、SWORD方面とのパイプが欲しかった。ってのもあるんだけどね、」
苦笑しながら、
「それは最悪ついででもいいと思ったんだ。」
「それは、俺がAに固執してたからっすか…?」
説明を淡々と続けるリョータくんに対して、ハヤトは隣で恐る恐る質問する。
確かにその辺ちょっときになる。
"どうして気が変わったのか"。
「残念ながら、ハヤトの答えは不正解やなぁ。」
今度はリュートくんが人のいい、優しい笑みを浮かべて言った。
「"わかったから"やな、」
「わかった?」
「せや。Aっていう人物が、どうしてこうもハヤトを包み込んだんか。」
その人となりが、
「自己紹介した途端に、わかってしもぅた。」
「そんなに僕、喋って無いですよ?」
「それでも、人となりはある程度わかるもんやで?」
佇まい、人を見るときの目。
そして拳や身体中にある怪我。
「それって、昨日の抗争のときのやろ?」
「あ、え、」
「隠さんでええって、それだけ"仲間を守った"んやろ?」
「そんな人を、無下にするほど。こっちも腐った人間ちゃうんや。」
それは清々しいほどに。
かっこいい顔だった。
「でも、」
今度はまた、リョータくんが言葉を続ける番だったけれど。
その口は重い。
立場上、
"全面的に仲良く、味方をする訳にもいかないのが現状"
それはとても厳しい現実だった。
「優先、とかはいくらでもできる。」
Aくんを嫌う"フリ"も、いくらでもできる。
だけど。
「未だ、"大人たち"の力が強い以上は…ね、」
「ならその間は、それらしくしましょう。」
演技を、しましょう。
「もちろん、僕だって情報は欲しいです。」
だから、
「きちんと情報も交換して、僕たち4人以外。全員を、」
騙しましょう。
「え、それって…、」
「もちろん、そういうことだよハヤト。」
僕は、僕の恋人も総長すらも騙すんだ。
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作者名：シラハマ | 作成日時：2019年4月5日 5時
