山王商店街の住人、だった。 (ページ10)

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やさしさに触れてページ10

「…ヤマト、」
「おぅ!」
久しぶりだな! A!

山王の人は…頭を撫でたがるのかな。
セットなんぞ知らん。
そう言わんばかりに、これまた大きい手で撫でられた。

…犬では、ないんだけどな。

とりあえず、いざこざがあったのは事実で。
僕は一旦、イトカンに匿ってもらうことに。

おつかい中だからどうしよう。って、
ものすごくオロオロしてたら、
僕が知らない間に、イトカンの店長になってたナオミちゃんが、
わざわざ…電話してくれて。

店長が迎えにきてもらう流れになってしまった。
…情けない。
簡単な事だった筈なのに、なんでって。

また、泣きそうになる。

やっと、やっと。
ちょっとだけど、出来る事、増えたのに。
そう思ってたのに。

僕の気分はどん底だった。

なのに。
「お袋さんも、親父さんも教えてくれへんとか…!」
自分、ムッチャ頑張っとるやん。
「あの本の虫だったAが、まさかの、接客業!」

あんなに突き放したのに、
良い人だって分かってて、でもそれがしんどくて
僕の都合で突き放した筈の二人は。

幼馴染と腐れ縁の同輩は。

ダンと、テッツは。

何故か自分のことのように、喜んでくれていた。

「そういえば、なんだけど…。」
バイト先からここまでは、片道30分弱あるので
自ずと談笑タイムになっていて。

だからこそ、見慣れぬ彼が気になった。

僕もずっと山王で育ったけど…
あんまり見たことない顔で。
かつ、鬼邪高の制服? 学ラン? を着ていて。

いい意味でも悪い意味でも浮いてたから。
好奇心に負けて、つい聞いてしまった。

そして、それはそれは丁寧に説明してくれたのだけど
ものすごく長かったので、
省略すると。

曰く、鬼邪高の転校生だったけど。
その制度というか、スクールカースト的なもので問題を起こして。
絡まれてるところを、ヤマトが助けたそうだ。

で、歳がテッツと同じ…つまり僕とも同い年で。

…山王のメンバーに、紆余曲折あったものの。
なったらしい。