できること ページ17
バイトに明け暮れていたら。
いつのまにか。
イトカン散乱事件から、またちょっと経って。
でも、暇を見つけては。
彼ら同様、イトカンに入り浸るようになって。
ある日ふと、チハルが。
ある日は、ヤマトが。
あるいは…と、違和感にも気づくようになった。
なんとなく、違う。
その程度だけれども。
“つるむのが当たり前”
そう思い込んで居た。
だけど、みんなだって人間だ。
僕みたいに、ウィークポイントがあるんだって思い知る。
…コブラはやっぱり、とても分かりにくいけど。
それでも、目は口ほどに。というように。
やっぱり表情があって。
動作にもそれが現れる。
要約すると。
ダンはキッカケにすぎず。
さりとて、僕の思い込みじゃなければ…チハルも本意に。
と言うわけでもなく。
でも、この地域の現状が現状だから。
上手くいかないことが重なって。
悪い方向へと、転がってしまった。
転がり続けている、緩やかに。
加えて、過去に因縁のあるものの存在。
その行動が読めない。
ここまで暖かい場所は無いだろうに。
今までにない不穏さである。
僕だって、空気に飲まれて…いたたまれなかった。
もちろん。
喧嘩に勝てるなんて思ってない。
なんどもいうように僕は弱いから。
迷惑を、かけるだけだと。
実感してた。
だけど。
過去の、今までの、何にもできない僕とも違った。
だってそれを、
僕の親友が教えてくれたから。
幼馴染は、商店街のお兄ちゃん達は。
僕を、守ってくれたんだから。
だから、もし。
「僕に、僕に…」
もし出来ることが、少しでもあるのならば。
「手伝いたい。喧嘩はもちろん、よわい。」
だけど、
「ともだち、を…助けたいよ…。」
その小さな叫びは。
我らが頼もしい総長に、届いていて。
「…必要な時は声をかける。」
だから、早まるなA。
そう、低いけど、怖くない。
優しい声で応えてくれたのだった。
僕は、この時から。
気づいたら。
バイクにも乗れないのに。
喧嘩だってできないのに。
それこそ、なにか儀式をした訳でもないのに。
それでも。
山王の仲間だと、彼らの中に。
少しずつ刻み込まれるようになった。
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作者名：シラハマ | 作成日時：2018年4月30日 21時
