変われるよ。変わろう? ページ15
「じゃなかったら、助けてなんてくれないよ!」
そう思わない? A。
そう思うこと、難しいかな??
僕はその言葉に驚いていた。
言われてみれば、たしかにその通りな筈なのに。
嫌いな奴をわざわざ助けるほどの、狂った勢いのお人好しなんて…
それこそ、それこそいるか分からない勢いなのに。
なんで気づかなかったんだろ…。
ぽかん、としてたら
「だろ?だから、きっと大丈夫。」
何かあったら相談乗るし、手伝いもするから!
親友は誇らしげに、
またいつもの明るい顔を僕に向けてくれた。
あれから数日。
バイトはもちろんあったので、
頑張って勇気持って、行こうって。
そう決意した筈なのに。
結局イトカンに行く機会にも恵まれず。
加えて。
家がドチャクソ近所な筈なのに、
ダンにもテッツにも会わない日が続いて。
なんかおかしいな、と流石に思った日。
僕は改めて、
勇気を振り絞ってイトカンへと向かった。
そこは、僕の知ってる、
ビンテージ風であったかい場所じゃなくて…。
誰かに荒らされた後だった。
そこにいる山王のメンバーが、ワーワーと言い争ってる。
僕が先日絡まれた、ラスカルにやられたらしい。
きっかけの事件は、僕じゃないらしいけど…。
“やり返す”
“やられっぱなしな訳にはいかない”
“でも”
そんな会話が、
またテレビの向こう側みたいな感覚で聞き取れる…。
「…なんで、」
気づいたら、声に出ていた。
僕がここに来ると思ってなかった、
山王のメンバーとナオミちゃんの視線が一斉にこちらを向く。
「怪我はないの…?」
自信はなくて…。
でも静かな今のイトカンには響き渡る声。
ナオミちゃんがかろうじて、
一応、自分自身は大丈夫だと。答えてくれた。
となりのダン達はイライラしてる。
コブラの様子はうかがえない。
でも。
「ハンムラビ法典では、目には目を、でも。」
侍はね、復讐を達成したら自害するんだよ。
そこで、終わらせるの。
虚しいね、ただ虚しいよ。
だってそこに、何が残るの?
自分の気持ちは整理できるけれど。
例えば自害してしまえば。
そのあとは、何も。
残された側は、いったいどうなるんだろう。
どんな気持ちになるんだろう。
…お節介なのは分かっていた。
僕は部外者だから。
幼馴染だろうがなんだろうが、
だってメンバーではないから。
だけど。
僕の声は、あてもなく。
けれどたしかに。
その場に響いていた。
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作者名：シラハマ | 作成日時：2018年4月30日 21時
